第二部
第一章 〜暗雲〜
九十六 〜再会〜
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兵も一部は洛外に逃れたようですが、壊滅と言っていいでしょう」
「宮中に逃げ込んだ兵は、全員討ち取りました。……歳三殿に傷を負わせてしまったのは、甚だ残念ですが」
疾風が唇を噛む。
「仕方ありませんわ。歳三様が動かなければ、今頃は……」
「紫苑、その事はもう良い。続けよ」
禀が頷く。
皆に気づかれぬように、そっと月の頭を撫でてやる。
一瞬驚いた月だが、すぐに安心したように眼を閉じた。
「ともあれ、戦闘はそれで終結しました。我が軍の被害ですが、戦死七十五名、負傷者が約五百名との事です」
「規模の割には、比較的軽微で済みましたね。勿論、戦死者を出してしまったのは残念ですが……」
「それは仕方あるまい、朱里。抵抗する敵を相手にした戦闘だったのだからな」
「彩の言う通りなのだ。鈴々達も必死に頑張った結果なのだ」
「そうだよ、朱里ちゃん。私達、そういう時代に生きているんだから」
「……う、うん」
ふっ、先輩の筈の朱里が、雛里に諭されるとはな。
「風からも報告しますねー。宦官さん達のうち、張譲さんと趙忠さんを除いた皆さんは逮捕したのですよ」
「な、なんやて? ホンマかいな?」
「勿論ですよー」
「風と踏み込んだところ、金銀財宝を無断で持ち出して逃げようとしていたのだ。だから、捕縛してある」
いくら疲労していたとは言え、宦官共に疾風に刃向かうだけの力があろう筈がない。
「全く、下衆にも程がある。余力さえあれば、私が素っ首を刎ね落としてやったものを」
「言うではないか、閃嘩。傷が癒えたら、一勝負せぬか?」
「望むところだ、愛紗!」
「二人とも、話をわき道に逸らさないで下さい」
窘める禀。
「それで風。宦官共は、何か吐いたのか?」
「はいー。お兄さん包囲網に失敗したとなった後、陛下に迫って逆賊討伐の勅令を出すつもりだったようですねー」
「逆賊だと! 主の何処が逆賊だ」
「全くですな。歳三殿も月殿も、何の落ち度もありませんぞ」
憤る星とねね。
「ただ、陛下はそれを頑として拒んだようですねー。その間にお兄さんの軍が迫ってきたので、それで慌てて陛下を連れ去ったみたいですよー」
なんたる不敬だ。
連中には、敬意の欠片もないのであろう。
「ですが、まだ油断は出来ません。陛下の身柄を、張譲らが抑えているとすれば」
「……強引に勅令を出させる事もあり得るわね」
禀と詠が、顔を見合わせて溜息をつく。
「もし、私や月がその対象にされたとしよう」
「殿!」
「歳っち、何ちゅう事を!」
詰め寄る彩と霞を手で制し、私は続ける。
「あくまでも、仮の話だ。まず、誰が応じると思うか?」
「応じるとは……。勅令にて、歳三様や月殿に対して兵を向ける……という事ですか?」
「そうだ。全てがその筋書に沿ったも
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