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第一章〜囚われの少女〜
第十三幕『画策』
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るかのような光景だった。騎士は歩調を緩めるよう懇願する。「私のお傍をお離れになっては危険です! 賊が紛れ込んでいることが万が一あれば」
(――万が一)階段の途中で、姫はようやく立ち止った。「……あれば?」そこから振り返り、ほんのすこしの間見えた、柔らかな微笑み。その微笑みは時を止めた。
「あなたが助けてくれるのでしょう?」
騎士の視線は自分に向けられた表情に、全てを奪われた。
「は……はいっ!」姫に返事をした時、すでに時は動いていた。「姫様〜!」
(……元気になられたご様子だな)
 ふわりと身軽に降りてゆく姫。鎧の青年はその姿から、結局片時も目を離すことが出来なかった。


――


 劇場は王宮の一部となっており、一階席は一般人。そして二階席には王族の席が独立して中心――つまり劇を正面から見られるように設計されており、そこから貴族と来賓の席が左右に分かれて設計されていた。
 一国の姫は青年の騎士を侍らせ、王族の席から観劇している。どこか浮かない表情をしており、心は別の場所に置き忘れたかのように無機質だ。どんなに明るく気丈に振る舞おうとも、一抹の不安と罪悪感――無力感に苛まれ、観劇を心から楽しむような心持ちにはなれなかった。



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