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第一章〜囚われの少女〜
第十三幕『画策』
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々研究に集中していた学者とっては、耳障りだったことだろう。
「ダニエル君。書斎では静かにお願いしますね」
若い騎士は、老人にたしなめられる。鎧の騎士が本を片付ける間、しばらく書斎はピリピリとした空気に包まれていた。
「さて、ダニエル・アンダーソン君。君は急いで姫を追わなければ。それから姫様に、おいぼれが申していたとお伝えください――」
(えっ?)自分の使命に気付き、慌てるダニエルは一瞬振り向くがそのまま背中で聞いた。「わがままに生きるというのも、一つの道かもしれませんぞ。と」
それは自分に対する言葉のようにも聞こえた。

――


「あの……資料保管庫に用があるのですが……」
資料保管庫前の扉は、いかにも頭の固そうな兵士によって守られていた。「姫様であろうと、ここに立ち入って頂くわけにはいきません」
姫は困り果てた様子でそこに立ち尽くす。
(どうしたらいいのだろう……こんな時)
 後ろからカシャンと音を立て、騎士が追いついてきた。
「姫様。そろそろ劇場に向かわれた方がよいかと……」姫の姿が確認できて一安心だが、確実に傍で護衛をしたいダニエルは、観劇を勧める。
「えぇ……そうね。ここにいても、私にはどうしようもできないみたい」姫は、何もできないという無力感と、何をしたらいいかわからないという絶望感に襲われていた。
「……やはり姫様は何か、ご心配を抱えていらっしゃるのですね? それが何かは存じませんが。でも――」騎士は姫の手をとる。
「そんな時こそ、姫様の好きなお芝居を見ませんか? 姫様の安全は、このダニエル・アンダーソンがお守り致します。わがままに生きる、そんな姫様を全力で守りたいと存じます」
少しキザなセリフをこの男は、至って真剣に申し上げる。
「ダニエル……ありが、とう」
姫はそんなダニエルを大きく開いた瞳で見つめる。良い意味で、姫にとって意外だった。姫の想いとは少しずれてはいるが。
「わがままなレナ様だろうと、私は……いや、皆はレナ様を愛しております」
姫よりも年上の青年は、頬を赤らめながら付け加える。「えっと……その、二コラ先生方がそうおっしゃっていたので」
 姫は柔らかく微笑み、白いグローブの手で鋼の指先を包み込んだ。
「そうね。あなたの言うとおりだわ――お芝居を見に行きましょう」

 しかしその微笑みは、悪戯な微笑みに変わった。姫は、足に絡みついてくる邪魔なドレスの裾を持ち上げた。ダニエルが気づいた時は既に、ヒールの靴で走り出していた。
「あっ! あの……っ!?」走るには動きづらい、鎧をまとった体で慌てて姫の後に続いた。
 ゆるやかなカーブを描いた階段を、上品なドレスを着た少女と鎧の音が駆け降りる。
「姫様! 何をそんなにお急ぎになっているのです!」
 まるで子供の追いかけっこでもしてい
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