第5章 契約
第73話 湖の住人
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終息させる事が出来る、とも告げたのでした。
そして……。
現在、十一月、第一週、ダエグの曜日。
ロマネスク・ピザンティン様式の聖堂の前に佇み、高き鐘楼……地上四十メートルの上に建つ聖スリーズ……高さおよそ十メートルの銅像を見上げる。
プロヴァンス地方独特の陽光を反射し、金箔に覆われた女神像が彼女に相応しい優しい微笑みを地上。そして、彼女が見つめる遙か地中海の先まで届かせているかのようで有った。
「こんな事をして宜しいのですか?」
本来はこんな聖人などではなく、本当にこのガリアの霊的防御を担うはずの少女神が、強い北風が吹き抜けた瞬間、何時の間にか俺の傍らに並び立って居た。
しかし、彼女のその表情に浮かぶのは聖母の如き微笑み。
そして、その姿形は、この聖堂の鐘楼の上に建つ聖人像や、この聖堂内の銀製の聖人像に非常に良く似た姿形。
「金ばかりむしり取って行くブリミル教のイカサマ臭い神様を拝むよりは、そのブリミル教の信仰の拠点の皮を被った地母神の信仰の拠点を造った方が、俺としては百万倍効果が有ると思うからな」
実際、今回の事件に関してもブルミル教の神様は何もしてくれないドコロか、その毎年数名の少女が行方不明と成って居た事件に関わって居たのがブリミル教神官ジュリオ・チェザーレで、そもそも、イフ島に存在していた湖の修道院でさえ、実は湖の住人グラーキーの信奉者たちが作り出した偽りのブリミル教の修道院だった。
更に、そのジュリオは何モノかに精神を操られて、本来の彼が望まない事を無理矢理にやらされていた可能性が高く……。
その彼の遺言が、『教皇の野望を阻止しろ』。ソイツが何を企んでいるのか今のトコロ判りませんが、それでも、死する前の彼が冗談などの類を口にしたと思えません。
ここまでの状況が出来上がっているのなら、無理に俺との相性が悪いブリミル教の聖堂を建てるよりは、俺との相性の良い精霊を祀る聖堂を建てる方がマシですから。
更に、その方が実質的に都市としての霊的防御能力を強化出来るのですから、これは正に一石二鳥。
「まして、この聖堂を造るのに能力を貸してくれたのはブリミル教の神でもなければ、その敬虔な信徒でもない。多くの精霊や俺の式神たち」
実際に、何の力も出していない以上、口出しもさせる心算はない。そう俺は言った。
そう。この聖堂。ノートル=ダム聖堂は、ブリミル教の聖堂のフリをした精霊を祀る神殿。
この聖堂を飾る守護聖人スリーズの像のモデルはすべて彼女、妖精女王ティターニア。
更に、この聖堂は女子修道院。そこで祈りを捧げる最初の修道女たちは、あの湖の住人グラーキーの夢引きに因って集められた五人の少女たちに勤めて貰う事にしました。
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