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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第73話 湖の住人
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う程の物でない所から、グラーキーの奴隷にされる事はなかったと言う事なのでしょう。

 但し、故に生者と死者の丁度狭間の状態。おそらく、短い間に生者のように振る舞う事は出来なくなり、元の完全な死者の状態へと戻るとは思いますが。

「湖の聖堂で戦った相手の顔を忘れたと言うのか、ジュール・セザール殿は」

 元々、ジュール・セザールと名乗った少年の能力を危険視して居た訳ではない上に、彼を奴隷と化そうとした邪神は既に存在しない為、今の彼に扱える能力は大した事のないレベル。そう判断して、答えを返す俺。
 しかし……。

「ジュール・セザール? 違います。僕の名前はジュリオ。ジュリオ・チェザーレ。ロマリア教の神官です」

 そう言いながら、彼を取り囲むようにして立つ俺たちの顔を順番に見つめて行く少年。その彼から発せられるのは困惑。今の彼に嘘を吐いている雰囲気はない。
 まして、先ほどまでの彼。ジュール・セザールと名乗って居た時と、今目覚めた少年は明らかに纏う雰囲気が違う。何と言うか、完全に人が変わって仕舞ったと言うか……。まるで、憑き物が落ちたと表現される雰囲気。

 そして、今の彼。ジュリオと名乗った少年の方が本来の彼で、先ほど俺と戦っていたのは裏の人格、と言う雰囲気を発していました。
 もしくは、悪魔かキツネに憑かれていたのか。

 どちらにしても、先ほど戦った時に感じた、態度や魂の質と、魄や肉体の間に漂う微妙な違和感のような物を、今の彼、ジュリオ・チェザーレと名乗った少年から感じる事は無くなって居たのは間違い有りません。

 そう考えて居た俺の返事を待ちながら、俺から始まり順番に顔を見つめて居たジュリオが、一人の少女の所でその視線を止め、そして再び俺の元に視線を戻す。
 そしてその瞬間、僅かにその横顔に自嘲的な笑みを浮かべた。

「彼女たちが居て、そして貴方が居る。
 ……と言う事は、僕はまたヤツらに心を操られていたと言う事ですか」

 まるで非常に疲れた者の口調で、そう呟くジュリオ。
 そして、再び完全に力を失ったかのように砂浜にゆっくりとその身を横たえた。

 いや、もしかすると、生きる気力さえもその時に、完全に失ったのかも知れない。そんな雰囲気を今の彼は発して居た。

 しかし……。

「悪いけど、ジュリオ。俺は、ジュリオ・チェザーレだろうが、ジュール・セザールだろうが。まして、ジュリアス・シーザーと言う名前の相手にも知り合いはいない」

 多分、人違いだろう。……と、俺はそう続けた。
 それに、俺がこの世界にやって来たのは今年の四月。まして、現在の俺の外見は蒼い瞳と紅の瞳の虹彩異色症状態の蒼髪の少年。元々の世界。黒髪こげ茶の瞳の少年だった頃の武神忍を知って居る人間や、タバサの使い魔武神忍
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