第5章 契約
第73話 湖の住人
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、伝承通りに剣山の如き無数の金属製らしき棘に覆われている状態。
その瞬間、上空に留まる俺の方向を三本の茎。その先端に着いて居るボゥっと光りを灯す何かが此方……。俺たち四人の姿を見つめた。
まるで感情を示す事のない黄色く濁った目玉で……。
ゆっくりと動き出す湖の住人グラーキー。
その瞬間、ヤツの行く先の何もない空間に現れる亀裂。そして、その亀裂の先に見える星空。
いや、あれはおそらく――――
「ティターニア、ヤツの足を止めてくれ!」
どうやら、俺たちと正面から戦う事が出来る状態ではない、……と判断した結果、自らの能力を使って次元の穴を開けたと言う事らしい。
しかし、何処に逃げる心算か判りませんが、こんなヤツを簡単に逃がす訳には行きません。
「湖の乙女。ヤツの防御用の術式を完全に解除してくれ」
確かに逃げ腰の相手で有るのは間違い有りません。しかし、ヤツが纏うのは間違いなく神気。
それも狂った神特有の非常に危険な気配。
もし、ここで逃がせば能力を取り戻した時に、俺に対してリターンマッチを挑まれる可能性もゼロでは有りませんから。
そして……。
「タバサ」
俺は彼女の名前を呼んだ。
普段通りの感情を表現する事の少ない視線で俺を見つめ返した後、メガネ越しのやや冷たい瞳で微かに首肯く。
そして、普段よりも更に一歩、余計に近付き、其処で自然な雰囲気で俺の腕の中に納まる蒼き姫。
月下でひとつに成る様子は、まるで恋人同士の抱擁を思わせるに違いない。
しかし……。
その瞬間、自らの精神の片隅に彼女の存在を確かに感じた。
俺とタバサ二人の完全同期に因り、俺自身が扱いかねて居た自らの霊力……龍気を完全に制御が可能な状態と成り、普段よりも高い能力を発揮する事が出来るように成る。
拡大し、更に鋭敏に成った感覚が、ティターニアの周辺で活性化した精霊の動きを確認した。
その刹那。
振るわれる繊手。その動きに合わせて緑のドレスの裾が可憐に翻る。
放たれたのは五本の矢。海と言う巨大な水の気を、ヤドリギと言う木行の矢に集めて描き出される巨大な魔術回路。
そして、その一瞬の後、巨大な湖の住人グラーキーを包み込む程の晴明桔梗印結界が大海原に描かれた。
いや、奴ら。クトゥルフの邪神を相手にするのなら、これはエルダーサイン。伝承では、奴らが嫌う印とされている。
但し、この形。海上に五芒星の形を浮かび上がらせるだけでは完成した訳ではない。
その次の瞬間、ヤツ……湖の住人グラーキーに纏わり着いて居た水の系統の邪神に相応しい邪気が振り払われた。
信仰する者を失った水の神格と、現在進行形で俺と言う禰宜を得てい
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