暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第5章 契約
第73話 湖の住人
[3/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
変えられた、と言う記録がマルセイユの街の方には、俺が知って居る範囲内では存在していません。

 つまり、今回の事件。マルセイユの街から十月(ケンの月) 最終週(ティワズの週)のダエグの曜日の夜に数名の少女が消える原因は湖の住人グラーキーの仕業でしょうが、そのグラーキーに最初の目覚めの切っ掛けを与えたのはおそらく別の存在。

 そして先ほど、ジュール・セザールが口にした、アイツに能力を与えた神と言う存在が、非常に怪しい存在だと言う事に成るのですが……。
 ジュール・セザールが今宵まで生者で有った、と言う部分から類推出来る存在は……。



 大地が激しく鳴動を繰り返す。
 但し、ここにも疑問が。
 何故ならば、グラーキーが登場する際に地震が起きる、などと言う記述は何処を探したとしても見つける事を出来はしません。少なくとも俺は知りません。
 更に、先ほどのグラーキーの棘による攻撃は大地から行われた。

 これはもしかすると……。

 猛烈な北風が吹き荒ぶ小島の上空。
 その暗い夜の蒼穹。しかし、この島に上陸した当初には間違いなく蒼穹に存在していたはずの紅と蒼、二人の女神と煌めく星々の姿がすべて見えなくなって仕舞って居た。
 この状態はまず間違いなく異界化現象。

 蒼穹……いや、世界自体が歪み、大地の鳴動は止まず。
 石畳の道が。三年前までは畑だったらしき場所が。そして、廃墟と成って仕舞った聖堂が激しく上下動を繰り返し、もともと、妙に平たい島だったこのイフ島の中心に黒々とした亀裂が走る。
 そして――――

 そして、その亀裂により分断された島の外側の部分がずるりと滑り落ち、海中に沈んで行く。
 周囲には朦々とした土煙を発し、海の水を土の色に変えながら。
 元々、この時の為に荒れていたかのような波は更に高く、イフ島をイフ島と足らしめている堆積物を削り取り、崩壊の余波で島全体が更に震動を重ね、その振動が更に崩壊の度合いを促進して行く。
 間違いない。これは島全体に何か理不尽な力が働いている。

 止める者も、当然、止めるモノも存在しない。崩壊のファンファーレは鳴り響く。
 そしてまた、世界が軋みを上げ、捻じり上げられた常識が苦悶の声を上げた。

 そして……。
 イフ島……。いや、今は湖の住人グラーキーと呼ぶべきか。完全にヤツの全体を覆い隠していた堆積物を振り払った姿は、伝承に伝えられているヤツと同じ物。

 但し――――

 でかい。眼下に現れたソイツを見つめて、最初に出て来る感想はこれ。
 全長で百メートルクラス。異端の物語に記されて居るナメクジの形と言うよりは、円に近い楕円形。
 上空より確認を行って居る故に、下部に関しては海に隠れて居る部分が多いので判りません。背中に関しては
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ