第三十四話「只今絶賛遭難中」
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彼が言う通り、とても良い場所だ。
適当な場所を見つけレジャーシートを敷く。いよいよお手製弁当を披露する時が来た。
緊張で手が震えそうになるけどなんとか堪え、巾着袋を取り出す。
「あ、あのね、お弁当を作ってきたんだ」
「お弁当って、ロスヴァイセが?」
「う、うん……その、食べてくれる?」
巾着袋から取り出したのは大小のお弁当箱。大きいのが彼ので小さいのが私だ。
彼は驚いたように目を丸くしていたが、ふと頬を緩ませた。
「ありがとう、ロスヴァイセ。嬉しいよ。だけど――」
そっとお弁当を脇に退けて、彼の手が頬に添えられる。
そして――。
「今はロスヴァイセが食べたいな」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
「えっ……?」
思わず目をきょとんとさせた私に彼は変わらず微笑みながら言葉を続ける。
「付き合い始めて一か月も経つんだ。そろそろいいだろう?」
いつの間に互いの肩が触れ合うほど接近していた彼は私の肩に手を添えると、軽く押した。
抵抗する間もなく彼に押し倒される。ここにきてようやく、私の脳は事態を把握した。
「えっ……えっ、えっ? ちょっ、ちょっとまって……!」
「待たない。散々待ったんだ、もう限界だ」
彼の猛禽類を思わせる鋭い目が私を射抜く。荒い息遣いが聞こえる。
徐に胸元に伸びた手が、がばっと服をたくし上げた。お気に入りの下着に包んだ胸が露出した。
「――」
「おぉっ! これがロスヴァイセのおっぱいか……色白でなんとも美味しそうだ」
声も出ないとはこのことか。
突然の行動に絶句した私に構うことなく彼は感嘆の息を零した。
無造作に胸を鷲掴みにされた。
「……っ! い、いや――」
「ん〜、いい触り心地だ。夢にまで見たロスヴァイセのおっぱい……感無量だね」
恐怖で引き攣る声。彼の普段と変わらない態度が余計に混乱を招いた。
「さてさて、こっちはどうかな?」
彼の手がスルスルと下に伸びる。
スカートの中に手を指し込まれた。下着に指が触れる。
「やめてっ!」
ここにきて、ようやく拒絶の言葉を発することが出来た。
覆いかぶさる彼をドンと押し返し、もたつく手足を動かして後ずさるように距離を取る。
恐怖で震える口から、乱れた呼吸が繰り返された。
「………………ってぇな」
彼の口から聞いたことのない声音が漏れた。見れば地面に擦れたのか、肘から軽く血が滲み
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