第三十四話「只今絶賛遭難中」
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訪れた。
激的な出会いが訪れた。
「夢を諦めるなんてもったいないと思う」
それが初めて聞いた彼の言葉だった。
「僕もキミの夢、手伝うよ。それはきっと素晴らしいことだと思うから」
そう言って手を差し伸べてきてくれたのは、隣接する学校――英雄養成学校に在籍する男の子だった。
まるで絵に描いたようなさわやかな風貌をした好青年。俗にいうイケメンというやつだった。
恋に落ちた。一瞬だった。……一目惚れだった。
けれどそれは、顔でも容姿でもなく、彼の心に惹かれたから。
初めて私の夢を肯定して、応援してくれた彼の言葉が、言葉に表せないほどうれしかったのだ。
生まれて初めて接する同年代の異性。それも初恋の人を相手に頭の中が沸騰しそうだったけど、ある日、勇気を出して、この内なる胸の思いを打ち明けた。
――好きです、付き合ってください!
何の捻りもない言葉。今思えばもっと気を利かせたことを言えなかったのか赤面する思いだが、彼は私の言葉に笑顔で以て頷いてくれた。
そして始まった、初めての交際。
世界が輝いて見えた。
なんでこんなちっぽけなことに悩んでいたんだろうと思えるくらい、充実した毎日だった。
私は見つけたんだ。私だけの勇者様を。
私は叶えたんだ。夢の一部を。
彼が運命の相手だと確信して疑わない。彼こそが、私の待ち望んだ勇者様なんだ!
† † †
そして今日。交際し始めて丁度一か月になる記念日だ。
先週から楽しみにしていたデート。
いつもより朝早くに起床して、お弁当作りに四苦八苦しながらもなんとか完成させた。日頃から料理なんてしないから結構時間と食材を無駄にしたと思うけど、食べられるはずだ。味見もしたし。
記念日と言ってもデートはありふれた恋人たちがするような内容だった。ショッピングを楽しんだり、図書館に行ったり、水族館に行ったりと、終始笑顔が絶えなかった。
こんな何気ないデートが楽しい。一日が充実していると実感できる。
そして、時刻はお昼。
お昼ご飯の場所は彼が良い場所を知っているとのことなので着いていくことに。場所はどこかの森の中みたい。
入口には看板があり『魔力放出禁止区域』と書いてあった。どういう意味なのだろうか?
彼に先導されるまま進むこと五分。開けた場所に出た。中央には小さな泉があり、木々に囲まれているため新鮮な空気に満ちている。
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