第三十四話「只今絶賛遭難中」
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すると術式が起動しない。どんな初級魔術でも必ず失敗に終わる。
これはヴァルキリーとして致命的だ。
ヴァルキリーの戦力としての価値は、如何に魔術の扱いに長けているか。その一点を求められる。
ヴァルキリーとしての未来を奪われた気持だった。
これは身近な話にも関わってくる。
学校の授業にはもちろん実技がある。しかし魔術が扱えない私は毎年単位を落とす羽目になった。
学園長の温情で、留年という形で時間を与えてはもらえたけれど、それは限られた時間内で打開策を見つけられなければ退学になると、言外に案じているようなもの。
それでも、私はあきらめなかった。ヴァルキリーとして大成し、勇者様と添い遂げる幼少からの夢を閉ざしたくなかったから。
病院に通った。ヴァルキリー専門のカウンセリングにも通った。けれど、返ってくる答えは……異常なしの一言。
なら、私の勉強不足なのだろうか? そう思った私は寝る間も惜しんで魔術書を開いた。
学校の図書館に籠り、多くの魔術書を紐解いた。北欧式から西洋魔術、初級魔術から最上級魔術、歴史書にまで手を伸ばした。が……結果は変わらなかった。
どんなに努力してもダメ。
考えられる限りの手を尽くしてもダメ。
クラスメイトも「大丈夫だよ」だとか「頑張ればなんとかなるよ」と声をかけてくれていたけれど、いつしか皆の見る目が変わってきた。
「まだやってるよ」
「いい加減諦めればいいのに」
「もともと才能ないんじゃないの? 才能がモノを言う世界なんだから。あんなに頑張って……みっともない」
「ていうか、入学できたのってなんで?」
「あれじゃない? 人間界で言うところの裏入学ってやつ?」
「ロスヴァイセって顔だけは綺麗だし身体つきもいいから、上の人を誑しこんだんじゃないの?」
「うっわー……身体売るとか、ヴァルキリー以前に女として終わってんじゃん……」
憐憫、侮蔑、的外れな嘲笑。
負の言葉、負の視線、負の感情。
これらが怒涛の嵐のように私を中心に吹き荒れた。何より心情的にきつかったのは……唯一無二の親友だと思っていた女の子も私を蔑視の目で見ていたことだった。
泣いた。生まれて初めて泣いた。
涙が枯れるまで、声を大にして泣いた。
それからだろうか、夢を諦め始めたのは。心の奥底に無意味だと思う自分がいて、それが無気力に繋がった。
だから、学校から今期の実技試験で結果を残さなかったら退学になると最後通知が来ても、大して心は動かなかった。
けれど、そんな私に転機が
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