暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
そして英雄達は………
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身体が冗談みたいな勢いで吹き飛ぶ。大木の幹に、またクレーターができる。

いや、それだけではない。レンの体が当たった大木の後ろにある数十本の樹木が、衝撃が透過したようにその幹に亀裂が入る。

ガラゴシャアアアァァァァーッッッ!!!

轟音とともに崩れ落ちる樹齢何千年と知れない大木達。それによって巻き起こった土埃が夜の闇を白く染め上げ、全ての生き物の視界を塞ぐ。

口元を右腕で覆い隠しながら、《宵闇の軍神》は傍らの《暗闇の瞬神》に言う。

「やった………か?」

「………わからない」

土煙は思ったより濃く、なかなか白き闇は晴れてくれない。その向こう側にうずくまって動いていないはずの少年の姿もまた、見えない。

「リョロウ、《神装》はあとどのくらい持ちそう?」

「あと……三分ほど、かな。君はどうだい?セイ」

「僕も同じようなものかな………」

ちらり、と二人はそれぞれの手元を見る。

二つの神の武器の輝きは、初めのうちほど闇を切り裂いていない。

ははは、とセイは苦笑した。

「かなり持続時間は延びたはずなんだけど、やっぱり卿ほどじゃないね。持続時間もだけど、なにより威力が、ね」

「確かになぁ。ま、アレと比べること自体がおこがましいのかもね」

はっはっは、と笑う二人。

しかしその笑顔は、土埃の白き闇の向こうからゆっくりと表れたシルエットに凍りつく。

その人影は幼さが残る顔を深く深く俯かせていた。長めの前髪の奥から、二つの真紅の輝きがこちらに向けられている。

ソレを見たとき、リョロウとセイの体に激甚な恐怖が湧き上がった。

それは原始の昔から遺伝子の中に組み込まれている、本能的な恐怖。例えば、沸騰した熱湯に触れた手を咄嗟に引っ込めてしまうような、そんな本能レベルの反応。

土埃の中から現れたレンが握っていたのは、背の高いリョロウよりもなお高い漆黒の両手槍(ランス)だった。その材質は木でも、はたまた鉱石で作られた物でもない。

闇よりもなお黒い、過剰光(エネルギー)の塊としか形容できないモノ。

「しん……そう…………」

リョロウの口から漏れた震える声に、答えるようにレンは────

《冥界の覇王》は────

「《穿孔(グングニル)》」

言った。










空気が、ミシミシと悲鳴を上げる。

レンと、リョロウとセイの間の空気が、帯電(スパーク)したようにパチパチと火花が散る。

空間が、軋む。軋みきる。

最初に動いたのは、レンだった。

ゆらり、と。非常に緩慢な動きで、手の中にある黒い槍を肩に担ぐように構える。

それが緩慢すぎたからこそ二人は、リョロウとセイは動くことができなかった。
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