決戦前
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室内の電灯は消えて、卓上の光だけが薄く光っている。
外に光が漏れないように、毛布がかぶせられたそれは、卓上だけが見える程度だ。
広げられたノートの文字を読みながら、リシャール・テイスティアは文字に目を走らせながら、教科書に小さくかき込んでいった。
「相変わらず、頑張るな」
「ん。ごめん、起こした?」
気にすんなと、二段ベッドの上段から顔を覗かせた青年が首を振った。
セラン・サミュール。
子供の様な童顔な顔立ちは、十五歳にはとても見えないだろう。
幼い顔立ちと小さな身長――しかし、一学年において現在主席の成績を取る。
そんなサミュールは、リシャール・テイスティアと同室であった。
落ちこぼれのテイスティアに対しても平等に接し、一学年の期待を予選敗退という結果で裏切ったが、相手が強かったから仕方ないと無邪気に笑う。
小学生の悪ガキをそのまま成長させたような人物であった。
「よっ……と」
サミュールが上段から音もなく、飛び降りて着地した。
はしごを使えばいいのにと、テイスティアは苦笑する。
そんな視線を気にした様子もなく、サミュールが近づいてテイスティアに近づいた。
「明日は決勝だろ? 早く寝た方がいいぞ」
「うん。でも試験だって近いしね」
イベントがあるからといって、日々の授業がないわけではない。
ましてや、今まであまりにも酷い成績を取ってきたテイスティアだ。
盛り返すには、ぎりぎりのところだろう。
「なんだよ。俺に聞けば教えてやるのにさ。俺だって、そんなに悪い成績じゃないんだぞ?」
「セランが悪い成績なら、他の人全員が落第になっちゃうね」
「そんなことねーよ。賢いだけなら他にもいっぱいいるぜ? いまなにやってんのさ。見せてくれね?」
「ん。いいよ」
テイスティアがかいていたノートを差し出せば、セランは受け取った。
ノートに目を走らせながら、セランが眉をひそめる。
ぱらぱらとめくっていた手を止めて、真剣な眼差しでそれに目を通した。
ゆっくりと文字を目が追っていく。
「何これ。すげぇ、すげぇ!」
子供のようにはしゃぎだしたため、慌ててテイスティアがとめる。
声を落とすように言っても、サミュールは興奮した様子をやめようとしなかった。
「学校の授業よりわかりやすいし。俺でもわからないこと一杯あるぞ。これ、どうしたんだ、リシャール?」
若干声を落としながらも、尋ねるサミュールにテイスティアは少し嬉しそうに微笑んだ。
「先輩が教えてくれたんだ。こっちがコーネリア先輩のノートで、こっちがローバイク先輩。これがワイドボーン先輩で、こっちがアレス先輩」
「烈火のアレス! うわ、見てぇ。見せて!」
「ちょっと。声が大きいっ
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