決戦前
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視線を送れば、シトレが相変わらずにやにや顔をこちらに向けていた。
自然と、スレイヤーの手も伸びる。
「ほ、本気でもぎ取ろうとするな」
「失礼。大きなたらこが付いていたので」
「それは私の唇だ。だが、スレイヤー教頭――君が彼に対して何かを与えたつもりはなくても、その表情だけで十分贔屓に見られるということも理解してくれよ」
「学校長」
真面目な表情をするシトレに、スレイヤーが怪訝そうな顔を向けた。
「例え、君がそう思っていなくてもだ。君が彼のことを思う態度だけで、周りは間違えた判断をしてしまうかもしれない。特に彼が今後昇進していけばなおさらな」
「相変わらず私には理解できない世界ですな。しかし、心にしておきましょう」
「ああ。この地位になると厄介なことだらけだ……君も今のうちに覚悟しておいた方がいい。上に行くのならな」
「――正直興味はないですな。一兵卒から少将と呼ばれただけで、十分です」
「だが。君の様な人物が上にならないと、同盟軍は良くならん。もはや少将になった君は、君だけの都合では動けないということだ。それを覚えておいてくれ」
「そこまでの給料は貰っていないと思いますがね。しかし、心しておきましょう」
頷いたスレイヤーに、シトレは満足そうに笑むと再び視線をモニターに向けた。
既に準備は整い、試合の開始時間がゆっくりと近づいてきていた。
+ + +
迎撃戦、防衛。
そう名付けられた想定の次に、戦場の情報が流れていく。
迎撃戦とは、その名の通りに敵から施設を迎撃することを目標とする。
迎撃側は四つの防御施設と一つの本拠地を有している。
画面の下部中央に本拠地が存在し、それを中心にして対称に距離を開け、横には二つの防御施設が存在する。
残る二つは本拠地の前方だ。
防御施設同士を線で結べば、本拠地を中央にして半円形ができあがるだろう。
それぞれの施設からは補給と若干の防御装置による支援が受けられる。
そう聞けば迎撃側が有利になるだろうが、この防御施設を破壊された場合にはそれに応じたペナルティを与えられる。
攻撃側はいかにこちらに見つからずに、施設を攻略するかがポイントである。
そのため若干の戦術的思考を必要とする。
どちらかと言えば、遭遇戦の方がありがたいわけだが。
小さくため息を吐きながら、与えられた艦隊に応じて編成を開始する。
相変わらず、こちらには宇宙母艦を三隻も配備している。
編成に苦労をしながら、それでも終わらせる。
完了すれば、ゆっくりと視界があらわになった。
本拠地の前に出る。
アレスは左翼に位置し、左からテイスティア、ワイドボーン、コーネリア、そして最右翼がローバイクという並びである。
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