決戦前
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それは一人の軍人として、心が躍った。
結果がどうあれ、明日は素晴らしい試合になるだろう。
そして、きっと自分もまた強くなれる。
そう思えば、自然とワイドボーンの表情に笑みが広がった。
「早く明日がこないものか。もう俺は待ちきれんぞ」
+ + +
ゴミを足で払いのけながら、ヤン・ウェンリーは小さく欠伸をした。
試合終了後に部屋で仮眠をとった結果、朝の四時という非常に中途半端な時間に覚醒したためだ。
部屋を片付けてくれる同室のものはおらず、五学年で新しい部屋が与えられてわずか数カ月でこのありさまである。
きっと卒業する頃には大掃除だろう。
今からも気がめいる。
もそもそと冷蔵庫をあけて、朝食代わりにパンを齧りながら、モニターをつけた。
映し出されるのは、先ほどの準決勝戦だ。
ラップもアッテンボローにも大きなミスはなかった。
ワイドボーンとアレスを相手に真正面から当たることはせず、上手く敵を誘い出した。
普通であれば、勝っていたのは逆であっただろう。
「こんな後輩がいるなんてね」
モニターに映るシーンは、勝利を決定づけたアレスの奇襲部隊への奇襲だ。
六千隻の奇襲部隊を、四千隻で打ち破った。
それも大きな時間もかけずに。
ラップも予想外であったのだろう。
全体図を把握できていたからこそ、自分は気づく事が出来た。
だが、実際にいれば自分もまさかと思ったことだろう。
奇襲を受けた部隊は矢のような鋒矢陣形によって、中央を分断された。
ここまでは考えつく。
だが、アレスは――中央突破と同時にスパルタニアンを射出していた。
普通はできない。
いや、出来ると思ってもやろうとは考えない。
戦闘艇を射出するには、それ相応に速度を落とす必要がある。
もし艦隊の速度が早過ぎれば勢いによって態勢を取れずに、自沈する。
かといって遅すぎれば、敵陣を突破出来ず包囲されることになるだろう。
だが。
「機械のような正確性だな」
可能だと、自信があったのだろう。
アレス・マクワイルドは戦闘艇を射出出来るぎりぎりの速度を考え、中央突破中に一瞬だけだが速度を調整している。
それが長引けば逆に包囲されていたのは、アレス艦隊だっただろう。
その包囲をされない速度と射出出来る速度を理解しなければ、出来ない。
ゆっくりと冷や汗が伝う。
偶然だろうか。
いや、偶然と決めつけるには余りに危険だろう。
宇宙母艦三隻を含む、敵陣中央に射出されたスパルタニアンが中央突破によって混乱する敵陣を縦横無尽に飛び回る。わずか数分――たったそれだけの時間で六千隻もあった軍は壊滅近い打撃を受けていた。
烈火か。
今ま
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