決戦前
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て!」
再び興奮するサミュールに、テイスティアはノートを差し出した。
嬉しそうにそれを読み始めるサミュールを見て、テイスティアは目を細めた。
それぞれが一学年の時代に使っていたノート。
しかも、一部においては学年主席ですら凌駕する知識を持っている人物達である。
そのノートを書き写すだけでも勉強になる。
さらに、訓練終了後はその事について、個別に教えてくれる。
きっと自分は幸せなのだろう。
さっぱりわからなかった授業の内容も、最近では理解できるようになっている。
しかし、それも明日で終わるのだろう。
そう考えると――少し悲しい気がした。
でも、頑張らないとね。
小さくテイスティアは思う。
ここまで先輩が動いてくれたのだ。
やはり落第しましたなど、言えるわけがない。
そう決意を固めるテイスティアの前で、サミュールがノートを閉じた。
「いいなぁ」
「うん。いいでしょ?」
「嬉しそうにいうなぁ。このノートだけで、金出す奴はいっぱいいると思うぞ」
「見てもいいけど、あげないよ?」
「さすがにとらないよ。先輩が恐いし」
くすりと笑って、サミュールがノートを返す。
受け取って、テイスティアがノートを卓上に置く。
その様子をサミュールはどこか嬉しそうに見ていた。
「どうしたの?」
「いや。かわったと思ってさ」
「そうかな?」
「気づけよ。俺は半年お前をみてたんだぞ。昔は、何か俺に遠慮してただろ?」
「え……うん。まあ」
そう言われて、テイスティアは頷いた。
学年主席のセラン・サミュールと学年の落ちこぼれであるテイスティア。
声をかけるのも戸惑い、自分の意見を言うこともなかった。
「寂しかったぞ。同じ年なのにさ」
「ご、ごめんね?」
「大体、学年主席とかどうでもいいだろ。それなのに、皆遠慮ばっかりして。勝手に期待して、負けたら勝手に失望して――」
呟かれた言葉に、テイスティアは目を開いた。
少し寂しげな声。
一学年で予想が高かったのは、主席であるセラン・サミュールのチームだ。
しかし、彼らは予選の早い時期に――アレスの友人であるスーンのチームによって、ぎりぎりながらも敗北する事になった。
もっとも、そのスーンのチームもアレスのチームによって、敗北したのだが。
本人が期待してくれといったわけではない。
だが、それを裏切ったという事は普段は見せないが、本人の心に傷を残した。
「セラン……あの」
「そこは慰めるところだろ」
言葉に詰まったテイスティアに、サミュールの小さな笑い声が聞こえる。
近づいて見える顔は、さっきまでの深刻な様子はない。
「別にいい。こっちは来年頑張ればいい話だしな。そ
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