喪失編
三話
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は自虐的に笑い、苦しげに腕を持ち上げ、俺の背後を指差した。
そこには、堂々と立つ黒のスタンド、世界。
少女を砂浜に沈めたのは、世界だ。
射程距離は短いが、俺とロビンの距離は数メートル。
それだけあれば、充分だった。
世界を瞬時にロビンの背後に移動させ、一撃。
予想外の事に戸惑っていたロビンに一撃を入れるのは思いの外、容易かった。
「俺が言った事を覚えているな?」
「......ええ。殺しなさい」
一拍の間の後、ロビンは小さく呟いた。
その声音は先程と違い、どこか寂しげな声音だ。
だが、やはり情など感じる事はなかった。
「ぐっ.....」
グググ......
ロビンの首を掴み、持ち上げる。
細身の少女の体は吸血鬼の力が無くとも、持ち上げられそうな程軽い。
ロビンと目が合った。
その目には既に殺意は消え、ただ一抹の寂しさを帯びていた。
ザー、ザー......
「......」
私は揺れる船の上で目を覚ました。
困惑した。
ふと首に触れる。
あの男に握りしめられた感触はなかった。
夢だったの?
「起きたか?」
そう思ったのも束の間、現実はそう甘くなかった。
目の前に私を殺した筈の男が甲板に立っている。
ふと皮肉が口を突いた。
「あなたも死んだのかしら?」
「いや」
「じゃあ、何でここにいるの?」
「.....言っている意味が分からない」
その言葉で確信した。
私は生きているのだと。
すると、私の中に疑問が生まれた。
「どうして生かしたの?」
男は私を見てから、海を指差した。
「俺は航海術などない」
男の言葉に唖然とした。
確かに海へ出るには欠かせないモノではある、確かに私は少しくらいならできるわ。
現にこの海賊船の航海士は私だった。
けど、腑に落ちない。
「......それだけなの?」
疑惑の目を向ける私に対し、男はただ一言。
「ああ」
と返しただけだった。
「フフ、ウフフフ.....!」
「.....なぜ、笑っている?」
私はなぜか、笑っていた。
楽しいわけでもなく、嬉しいわけでもないのに。
なのに、笑いが止まらない。
「フフ、分かった。航海士の件、受けるわ。それであなた、名前は?」
ひとしきり笑った私は男を問う。
男はすこし思案するような態度を取り、素っ気なく答えた。
「DIOだ」
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