喪失編
三話
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船から降りた俺は日課の訓練を行う事にした。
逃げる可能性もあるため、監視の意味でも場所は砂浜にし、向かう。
相変わらずの塩くさい匂いが鼻をつくが、流石にもう慣れ、顔をしかめるような事は無かった。
「始めるか」
人知れず呟き、拳を放った。
夕陽が砂浜を赤く染めた辺りで俺は訓練を終えた。
疲れた、という事はないが、思ったより長引いてしまったな。
俺は本物のDIOが見れなかった夕陽の光を受けながら、目を細めた。
夕陽が沈んだ頃合いで海賊船からこっちに2人の人間が走ってくる。
空には満月が浮かび、太陽とは違う光を放っていた。
「船の準備は終わったか?」
満月を眺めたまま2人の人間に問う。
「は、はいっ!いつでも出港できまう!」
女は緊張していたのか、最後の方を噛んだ。
「お、おい!何噛んでんだよ!」
「すいません!」
頭を下げる少女と顔を青ざめさせた男。
見なくても、そうしているのであろうと分かった。
人間は動物と違い、扱うのが楽だ。
金を与えれば、恐怖を与えれば、価値観こそ違うが、従う。
相手が自分よりも強者なら尚更だ。
「.....明日は早い、もう休んで明日に備えるといい」
敢えて噛んだ事には触れず、要点だけを簡潔に伝えた。
これ以上恐怖を与える必要はない。
少しだが、二人の恐怖が和らぐのを感じる。
「あ、ありがとうございます!」
「了解しました!」
「ああ」
そこまで答えて、ふと顔を2人に向ける。
突然の事に2人の人間は肩を強張らせて、目を見開いた。
「ど、どうかしましたでしょうか?」
男の方が震え声で聞いてきた。
「服従を誓う限り、お前達に危害は加えない」
「えっ?それはどういう」
少女の方が首を傾げ、問い返す。
「言葉通りの意味だ。従うなら危害は加えないが、危害を及ぼすようなら容赦するつもりはない」
「い、いえ!とんでもないです!危害を加えるなんて、そんなっ!」
狼狽する男に軽く手を振った。
違う、お前ではない。
「俺が言っているのは、お前だ。少女」
「.......」
少女の肩の震えが止まる。
怯えたような瞳も消え、代わりに氷を帯びた眼差しに変わる。
そこには、怯えていた少女はもういなかった。
「どうして、分かったのかしら?」
少女は笑みを浮かべ、俺を見た。
場にゆっくりと殺意が満ちていく。
やはり、猫を被っていたか。
「殺気だ。微弱だったが、お前達から時折殺気を感じていた」
「なら、何で彼は疑わなかったの?その時点ではまだ分からなかった筈」
その通りだった。
少女の言うようにそこまでならどちらが敵対心をもっ
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