第二部 文化祭
第33話 里香
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──大好きだよ、キリト君。
アスナは昨日、確かにそう言った。
うん、言った。いや、言ってない。絶対言ってない。天地がひっくり返っても言ってない。言うわけない。そう、聞き間違い。すべては聞き間違い。絶対聞き間違い。世界が真っ白になってもただの聞き間違い。
「……えっ」
周囲が突然ざわつき始めた。
耳を傾けると、「嘘だろ……」「まさか……」「桐ヶ谷くんが……」とみな口々に言っている。
もしかして、もう昨日のことがバレて──?
と、思いきや
「和人がロンダート失敗するなんて」
聞こえたのは、そんな声だった。別にこいつらは昨日のことがどうたらとかではなく、絶賛体育授業中の今、俺がロンダートに失敗したことを言っているだけだったのだ。
先ほど、体育教師に「ロンダートのお手本をみんなに見せてあげてくれ」と言われ、俺は不本意ながらも承諾し──ロンダートどころか、側方倒立回転とびさえもできなかった。
理由は他のことを考えまくっていたからだ。
「どうしたのよ、キリト。スランプ?」
体操着姿のリズベットが腕組して訊いてくる。今日の体育は学年全体でやるものだったので、別クラスの彼女も一緒なのだ。
「……たぶん、前者」
「そ。じゃあ病院行ってらっしゃい」
「冷たいですね……」
「あら、これでも心配してるのよ?」
リズベットが方眉を下げて言う。
「……どうせ、アスナとかアスナとかアスナなんでしょ?」
「えっ!?」
「え、違った? じゃあアスナ? いや、アスナか。それも違うわね、うーん、あ、アスナね」
「アスナ一択ですか……」
俺が溜め息混じりに言うと、リズベットが腕を絡めてきた。
「あたしだって……ちゃんと心配してるのよ?」
俯くリズベットの瞳は、心なしか切な気だ。
「研磨頼まれた時も、あんたが依頼から無事で帰ってこれますようにって祈りながらやってるし……それに、あたしもキリトのこと……だから」
一部よく聞き取れなかったが、言いたいことはわかる。
「キリト……女の子が好きな相手に告白した時、一番傷つく反応って……なにか、わかる?」
「ええと……『ごめんなさい』?」
「どんだけピュアなのよ! 違うわよ」
「え、じゃあ……なに?」
リズベットはやれやれと嘆息した。
「なにもしてくれないこと」
囁くように、しかしはっきりと断言するように、彼女は言った。
「せっかく気持ちを伝えたっていうのに、相手が返事くれなかったら悲しいわよ」
「……それもそうだけどさ」
「された方が照れててどうすんのよ。わかってるとは思うけど、した方が何倍も恥ずかしいんですからね」
俺の腕を放すと、その場で一度くるりとターン
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