暁 〜小説投稿サイト〜
神葬世界×ゴスペル・デイ
第一物語・後半-日来独立編-
第四十九章 その意志の強さ《2》
[8/8]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
でも入っていると。
 だから家族は皆、代々続く委伊達家の墓に入る時は、家族揃ってと言っていた。
 今は、ここで休養を取っているということだ。
 辰ノ大花には委伊達家を讃える祭りが年に三回あり、三月、八月、十二月に行われる。
 委伊達家の墓に入ったら、その祭りで大勢の人が来て大変だ。
 だから今は、しばしの休養なのだ。
 八頭は墓の前で一礼し、
「娘を、一人の男が救いに行きました。未熟な自分とは違い、とても芯の通った男です。きっと彼なら……娘を、救い出せます……」
 それから数拍置いて、
「なあ、幸鈴……俺は、お前を最後まで、愛せていたよな……」
 日来の長の、奏鳴に対する姿勢を見て、自身の愛が本物だったのか不安になった。
 そんなことを思うや否や、すぐに頭を横に振った。
 何かを振り払おうとするように。
「馬鹿か俺は。愛せていたに決まってるだろ……! だから駄目なんだよなあ、俺は」
 笑うが、返事は返ってこない。
 当たり前だ。
 目の前にあるのは墓石だ。
 返事をしたら、そっちの方が怖い。
「頼んだぞ…………幣・セーラン」
 彼の名を言う。
 他人任せだが、きっと彼が救い出してくれると。
 誰かに頼ることも必要だ。
 それが、自分のプライドを傷付けたとしても。
 一人で駄目で、皆でも駄目なら、最後は第三者に託すしかない。
 それは他人任せと言われるが、言われないようにするためには、自分自身は行動に移した事実とそれを発言出来る自信だ。
 行こう。
 ここで止まっていても意味が無い。
 それを、奏鳴の家族は望んでいない。
 主役は行った。
 ならば舞台を盛り上がらせるためには、脇役も必要だ。
 覚悟を固め、八頭は駆けた。
 音を立てず、気配を消して。
 潜むように木々を通り抜け、狙う獲物は奏鳴の救出を阻む者。
 一切の行動に音は無く、まるで獲物を狩りに行くようだった。
 目付きは鋭く、足は素早く動かす。
 獲物がいたなら、気付く暇も無く狩る。
 蛇とは、潜んでやって来るものなのだから。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ