第一物語・後半-日来独立編-
第四十九章 その意志の強さ《2》
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でも入っていると。
だから家族は皆、代々続く委伊達家の墓に入る時は、家族揃ってと言っていた。
今は、ここで休養を取っているということだ。
辰ノ大花には委伊達家を讃える祭りが年に三回あり、三月、八月、十二月に行われる。
委伊達家の墓に入ったら、その祭りで大勢の人が来て大変だ。
だから今は、しばしの休養なのだ。
八頭は墓の前で一礼し、
「娘を、一人の男が救いに行きました。未熟な自分とは違い、とても芯の通った男です。きっと彼なら……娘を、救い出せます……」
それから数拍置いて、
「なあ、幸鈴……俺は、お前を最後まで、愛せていたよな……」
日来の長の、奏鳴に対する姿勢を見て、自身の愛が本物だったのか不安になった。
そんなことを思うや否や、すぐに頭を横に振った。
何かを振り払おうとするように。
「馬鹿か俺は。愛せていたに決まってるだろ……! だから駄目なんだよなあ、俺は」
笑うが、返事は返ってこない。
当たり前だ。
目の前にあるのは墓石だ。
返事をしたら、そっちの方が怖い。
「頼んだぞ…………幣・セーラン」
彼の名を言う。
他人任せだが、きっと彼が救い出してくれると。
誰かに頼ることも必要だ。
それが、自分のプライドを傷付けたとしても。
一人で駄目で、皆でも駄目なら、最後は第三者に託すしかない。
それは他人任せと言われるが、言われないようにするためには、自分自身は行動に移した事実とそれを発言出来る自信だ。
行こう。
ここで止まっていても意味が無い。
それを、奏鳴の家族は望んでいない。
主役は行った。
ならば舞台を盛り上がらせるためには、脇役も必要だ。
覚悟を固め、八頭は駆けた。
音を立てず、気配を消して。
潜むように木々を通り抜け、狙う獲物は奏鳴の救出を阻む者。
一切の行動に音は無く、まるで獲物を狩りに行くようだった。
目付きは鋭く、足は素早く動かす。
獲物がいたなら、気付く暇も無く狩る。
蛇とは、潜んでやって来るものなのだから。
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