第一物語・後半-日来独立編-
第四十九章 その意志の強さ《2》
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セーランの言葉を区切る。
八頭は刀を握り締めたまま、強く瞳をつぶった。
「俺が行くと、奏鳴は距離を離しちまうんだよ。声を掛けてやっても、それは自分に対する気遣いからだって思い込んで。どんなに、どんな言葉を言ってもあいつには届かなかった」
一拍置いて、
「昔の奏鳴は……姉のように笑顔が素敵で、誰かに頼ることを知っていた。馬鹿に大食いで、兄と毎回大食い競争やっていて。優しいから、妹の面倒よく見ててさ。寂しくなったら母親と元に行って、強くなりたいと思ったら父親の所へ行っていた」
それなのに。
「それなのに、なんだああなっちまったんだよ……! 一人で何もかもやろうとして、強くなるために仲間にも虚勢を見せるようになった。勝手に色々抱えんで、誰にも何も言わずに一人先に突っ走って行っちまった。
気付いてやれた時にはもう、あいつはボロボロだったよ。心身疲れ果てて、生きる気力さえ失っちまっていた。本当馬鹿だなあ、俺達は……」
無力さから立つことをやめ、力が抜けたように地面に座り込む。
髪を乱暴に掻いて、深いため息を付いた。
潤んだ目を見せたくなくて、下を向いたまま。
「もっと、ちゃんと奏鳴に向き合ってやれていれば、こんなことにはならなかったんだ。所詮他人事だなんて、一瞬でも思わなかったらどうなってたんだろうな。最低だよ、俺達は……本当に。……最低だ」
沈黙となるかの村。
ここは依然、町から離れてはいたがそれなりに人が住んでいた村だった。
子どもや大人、老人もいたし、商売のために辰ノ大花まで遠出して来た荷馬車の休憩所もやっていた。
時代の流れはちょっと遅くて、少し古臭さの残っていた。
だが、その古臭さがいいと言う者もいた。
今は手付かずのため荒れているが、近くには自然公園があり、あまり有名ではなかったが辰ノ大花では訪れる者は多かった。
こんな寂しい場所になってしまったのには、理由がある。
辰ノ大花の者達にとっては、とても大きな理由が。
一息付いたところで、再び八頭は口を動かす。
「ここは、奏鳴の家族が眠る場所なんだ。家族揃って眠ってて、目視じゃ見えないけどが委伊達家から望遠鏡覗けばこの村が見えるんだ」
辰ノ大花は複数の山を平らにして出来た地域だ。
中央に大きな山があったことから、中心部が一番高く、外に行くにつれて低くなっていく。
だから中央からは辰ノ大花全土が見渡せ、この地域を治める委伊達家の屋敷が中央にはある。
そこから、かの村は見えるのだ。
聞いたセーランはその場を動かず、思ったことを口にする。
「じゃあ、ここで……殺されたのか」
「ああ。竜神の宿り主となった奏鳴の祝いがてらこの村によってな、起こっちまったんだよ」
地を見詰めたまま。
「人通りの少なかった場所だったが、奏
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