第一物語・後半-日来独立編-
第四十九章 その意志の強さ《2》
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、瞳に、耳に、肌に、家族を手に掛けた時と記憶が鮮明に刻まれている。
勝手に動く身体に家族を奪われ、彼女は家族殺しの名を背負ってしまったのだ。
「自身の手で家族の身体を千切り裂いたのを。肉片となすまで、家族の者達の悲鳴を聞きながら。抑えきれぬ力によって、どうすることも出来ずに、その身を返り血で真っ赤に染めるまで」
想像しただけで、恐ろしい光景だ。
一人の娘が自身の家族を追い、捕まえ、身体を千切り裂く。
返り血を浴びながら、血肉をばらまき――笑っていたらしいのだから。
昔、かの村に住んでいたある老婆が言っていたのだ。
間違いない。
「お前に癒せるのか? 自ら望まぬ形で家族の命を、自身の手で奪ってしまった委伊達・奏鳴の気持ちが。身体の自由が効く頃には、家族だった者達の肉片に囲まれていた恐ろしさを。
身体中を家族の血で濡らし、自身の愚かさを痛感しながら、泣くことでしか償えなかった……」
委伊達・奏鳴の、彼女の、
「あいつの気持ちが! お前には解るのか、日来長ああああああ!」
「――っ!?」
咆哮。
まさにそれだった。
想いの感情を込めた、本気の問い掛け。
圧倒されて、息を飲む暇すら無かった。
「あいつの元へ行き、例え救出出来たとしても。家族の死を嘆くまま、奏鳴を生かしておくなら。俺は……俺は、お前を許さない」
言葉はまるで空気を圧したかのように、聞くセーランの耳を打った。
奏鳴に対する想いが、声に込められている。
強く、はっきりと。
静かなかの村で、八頭の声は遠くまで届いた。
草木を揺らして、木々に声が反響して、遠くへと広がった。
そんなにも、彼女に対する気持ちがあったのかとセーランは感じる。
自分よりも彼女を想う気持ちは強いだろう。
心からの声がセーランの胸を打ち付け、心拍数を上げていく。
彼女の心を癒せることに、絶対の自信があるわけではない。
もしかしたら癒せないかもしれないし、癒す以前に彼女がこちらの声を聞かないかもしれない。
一度心を閉ざしてしまうと、またそれを開くのは、本人であっても、本人でなくとも難しい。
解る。
自分も一度、心を閉ざしてしまったから。
彼女とは違うが、この世界に対して。
しかし、自分には仲間がいた。
どんなに冷たく接しても、離れずにいてくれた仲間達がいた。
それは、委伊達・奏鳴も同じではないか。
「だったら、そんなに想ってやってんだったら、なんで助けに行かねえんだよ。仲間でも、そうじゃない奴でも、委伊達・奏鳴を助けてやれたんじゃねえのか」
「出来ていたらやっている! 出来無いから、駄目なんだ……」
「なんでだよ。結局それっぽっちの想いだっていうのか? 違うだろ!」
「俺じゃ駄目なんだよッ!!」
叫び、
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