第二部 文化祭
第32話 明日奈
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「あっ、これ可愛いー!」
アスナはイミテーション・タウンのショーウィンドウを覗く度、楽しそうな歓声を上げる。
「キリトくーん」
アスナがやたら甘い声で言う。ちなみにその先は予想がつく。
「このお人形可愛いなあー。誰か買ってくれないかなあー。たとえばどこかの黒髪剣士さんとかが、颯爽と……」
「解った、解った。いくらだ?」
「15000コル」
「高っ!?」
「お願い、買って! 一生のお願い!」
「一生のお願いをこんなことに使うのか……」
俺は溜め息混じりに呟くと、店内に入り、人形をレジに持っていった。
「……はい」
俺は諦め悪く、少しばかり不本意ながらも、購入した人形をアスナに手渡した。
「ふふ、ありがとう」
アスナが屈託なく笑みを浮かべる。
「ずっと大切にするね」
「いや、そんなに長いこと置いとくもんでも」
「君が初めてわたしに買ってくれたものだもん! 永遠の宝物だよー」
──ちょっと待て。その言い方だと、まるで俺たち
「どうしたの、キリト君?」
いわゆるアレ、みたいではないだろうか。
「キリト君てば! 今日、なんだか変だよ、君」
「そ、そうかな? そういうアスナこそ、最近なんかおかしいぞ」
「お、おかしくなんかないわよ!」
アスナは顔を真っ赤にして言った。
──こりゃマズイぞ、色々。
「あっ……アスナ、見ろよ!」
「え?」
アスナが怪訝な顔でこちらを見、俺の指差した先を見据える。
「空が……どうかしたの? さっき見たじゃない」
「いや、そうじゃなくてさ……ほら、しばらく見ててみ」
俺が指したのは、綺麗ではあるが、いつも通りのなんでもない夜空。
──しかし。
「……あ」
しかし、アスナが小さく声を上げる。
満天の星空を、垂直に素早く横切る光があった。今日は流星群の日なのだ。
「すごい……流れ星が、こんなにたくさん」
アスナは無邪気な声で言うと、すっと目を閉じた。
「ど、どうしたんだ?」
「黙っててよ、キリト君。今お願いごとしてるんだから……」
「へえ……どんなお願いしてるんだ?」
「……勇気を下さいって」
──勇気? ……結城?
「今、とんでもなく失礼なこと考えたでしょ」
むすっとした表情のアスナが言う。
「いや、別に。でも、なんで勇気?」
「ずっと言いたくて、言えなかった言葉を、ある人に伝える為」
アスナの瞳に宿る光は、いつも以上に強い。
「……そうか。それって、誰になんて……」
「ねえ、キリト君」
俺の言葉は中断された。
「──わたしね」
「……」
突然真剣な表情になった明日奈を前に
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