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占術師速水丈太郎 五つの港で
第三十九章
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「ですから」
「そうか、怨みが消えて」
「怨みがか」
「それで、です」
 そしてこうも言ってみせたのである。
「二度とああした無残な姿は見せません」
「そうあって欲しいのう」
「決してです」
「決してですか」
「それはこれから次第ではありますが」
 こう付け加えはした。
「またああしたことが起こればまた」
「そうじゃな。それはあってはならんことz」
 このことは老人の同意であった。
「折角海軍の頃から息づいているのじゃからな」
「その通りですね。さて」
「さて?」
「私はこれで」
 こう言って去ろうというのだ。
「帰らせてもらいますので」
「何処にじゃな」
「東京に」
 そこにだというのだ。
「帰らせてもらいますお地蔵様は今後立て札をかけたりフェンスをしておくべきかも知れませんね」
「そうじゃな。何らかの保護はしておく」
「それをお願いします。では私は」
「またな。それにしても」
 老人は立ち去ろうとする彼にまた言ってきた。
「東京か」
「それが何か」
「どうじゃろうな」
 東京と聞いてふと微妙な顔を見せてきたのである。
「あそこは」
「何かありますか?」
「あそこは何じゃ。もんじゃか」
 一応東京名物とはされている。その食べ物の話をしてきたのである。
「あれじゃが」
「もんじゃ焼きが何か」
「あれは駄目じゃのう」
 こう溜息と共に述べたのである。
「全くな」
「駄目ですか」
「やはりお好み焼きじゃよ」
 そして話を出してきたのはそれであった。
「お好み焼きが一番じゃよ」
「広島風のですね」
「大阪のも邪道じゃ」
 こちらもけなすのだった。けなしはしなくとも否定はしていた。
「やはり広島のお好み焼きが一番じゃよ」
「そういうものですか」
「何なら食べていくか?」
 人懐っこい顔で速水に声をかけてきたのだった。
「何なら御馳走するが」
「広島のお好み焼きをですね」
「本物のお好み焼きじゃ」
 こうまで言うのであった。
「それを御馳走しよう」
「そうですか。それをですか」
「どうじゃ?近所の店じゃがビールも冷えて美味いのがあるぞ
「いいですね」
 ビールも聞いてであった。さらに笑顔になる速水だった。
 そのうえでだ。老人にこう告げたのである。
「ではお言葉に甘えまして」
「そうするといい。あのお地蔵さん達が元に戻った祝いじゃ」
「そうですね。ではお好み焼きの後で」
 その後のことも既に考えている速水だった。
「あの場所に行きますか」
「あの場所とは?」
「少し考えている場所がありまして」
 そのことは今は言わなかった。ここから大湊にすぐに行くと言っても誰も信じない話だったからだ。それでそのことは言わなかったのである。
 しか
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