暁闇
指導者の帰還
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千が星の森で激突。
「早い者勝ち、とは承知していた心算だが失敗ったかな。
奴め、逃げ切る事は出来るか?」
グル族は約2千、ゴーラ軍3万に真正面から仕掛けては勝算が立たぬ。
戦況を望見する黒太子スカールは呟き、顔を顰めた。
ケイロニア軍に野盗の群れは歯が立たず、蹂躙され敗走するは確実。
イシュトヴァーンは鼻が利く故、ケイロニア軍からも要領良く逃れる筈。
仇敵を待ち伏せ、自由国境地帯で捕捉するしかあるまい。
「已むを得ん、北上するぞ」
良く通る声に従い草原の民、グル族の精鋭達が一斉に騎乗。
ノスフェラスより草原へ帰還した頃に感じた、一時の病。
異様な脱力感とは異なるが最近、妙な悪寒を感じる。
「グラチウスから貰った薬のせいかも知れぬ、暫く控えてみるか」
草原の鷹は数日後、闇の司祭に仕掛けられた罠に気付く事となる。
マルガ北方、星の森付近で激突する2大勢力。
ケイロニア軍の猛攻に、ゴーラ軍は押しまくられた。
1ザン後に抜群の練度を誇り豹頭王に直属の旗本隊、竜の歯部隊は後方に下がった。
ゼノンに経験を積ませる意図を秘めた采配、グインの思惑であるが。
魔戦士は踊らされているとは夢にも思わず、反撃の好機が訪れたと錯覚し勇躍。
逆襲に転じるが勇将ゼノン以下、金犬騎士団1万の邀撃で忽ち高揚した戦意が萎む。
ゴーラ軍は最初の1ザンで植え付けられた恐怖が再発、勢いに陰りが生じ矛先が鈍る。
金犬騎士団が危うくなれば、竜の歯部隊が出て来る。
敵兵の後方に控える水竜の旗印を見て、自然に及び腰となる新生ゴーラ軍。
戦意喪失とは言わぬが完全に委縮、攻撃も気迫に欠け容易く退けられた。
ゼノンは命令に忠実に従い、攻撃に転じて前進する事は控える。
トール率いる黒竜騎士団1万は逆に、圧倒的な集団戦闘の技量を披露。
グインの意図に沿い多彩な攻撃を仕掛け、ゴーラ軍の対応能力を試す。
迂回し想定外の方向から奇襲、或いは敗走と見せかけ誘い込んで待伏せ攻撃。
左右両翼が見事な連係動作《コンビネーション》、時間差攻撃を実演。
続いて中央突破と見せ掛け、密かに背後へ廻り込み包囲攻撃。
イシュトヴァーンも挽回を図るが、ゴーラ軍は翻弄され悉く先手を取られた。
(豹の畜生め、勝てる気が全然しねぇ!
くそったれめ、一体どうすりゃ良いんだ!?)
日没まで突破口を見出せぬ儘、ゴーラ軍は後退。
グインは金犬騎士団を下げ、黒竜騎士団と竜の歯部隊が夜襲に備える。
戦の匂いを嗅ぐ予知能力者イシュトヴァーンと云えども、パロの地理は弁えぬ。
次元の異なる戦闘能力を誇るケイロニア軍を相手に、夜襲を仕掛ける度胸は無かった。
マルガに暁の光が訪れ、湖の小島に佇む瀟洒な館
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