新風
湖の波紋
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タイ全土を竜の門から解放する事が唯一、根本的な解決となるのだよ」
「私も神聖パロ、カレニア政権の呼称は外す方が良いと考えていました。
中原の守護者グイン王へ主役の座を譲るには良い潮時、と思います」
言葉が出ない灰色の眼の魔道師に代わり、ヴァラキア出身の学者が冷静に応えた。
誰よりも重い責任を担っていた神聖パロ参謀長は、痛い程に実情を理解している。
ナリスは実質的な最高指導者の役割を務めた盟友、ヨナの苦労を思い瞑目。
カラヴィアのラン同様、アムブラの学生達も市民達の臨時指揮官役を務め相談も出来ない。
3日に渡り事実上1人で情勢の変化に対応して来た友に頷き、優しい眼差しを投げた。
「君はやや落ちるが、この中では人がましい方だ。
それとも、ヨナを凌ぐ叡智の持主かね?」
ヴァレリウスの瞳が泳ぎ、ヴァラキア出身の若者は隣で笑いを噛み殺す。
「マルガ離宮へ、連れて行っておくれ。
ルナンやワリス達、実際に戦っている者達と対面する必要が有る。
彼等には直接、感謝しなければいけないからね。
おそらく彼等は内心、相当な不満が溜まっている筈だよ。
自分達が戦闘の矢面に立っているのに、何の相談も無く物事が進んで行く事にね。
これまでは私の身体が問題だからと無理やり、不満を押さえ込んでいたのだよ。
或る程度まで病状が回復したと私から直接、感謝の意を伝えれば彼等も納得する。
私も剣を取って共に戦うと宣言すれば、これまでの忍耐も報われたと思って貰えるだろう。
次にマルガの人々へ顔見せだが、直接では無く上層階《バルコニー》からで良いね。
リンダとヨナに横から支えて貰い、私が車椅子から立って話す所を見て貰わないと。
大きな声は出ないから魔道で増幅、辿々しい喋り口になるだろうが逆に効果的かもしれない。
演出次第だが御披露目を済ませ、イシュトヴァーンと会う」
「なんですって、イシュトヴァーンと会う?
ゴーラ軍のど真ん中にいる無法者と会って、無事に帰って来られると思ってるんですか!?」
実質的な魔道師ギルド指揮官、パロ最強の実力者が漸く呼吸を整え口を挟む。
満面に溢れる虫も殺さぬ無邪気な微笑、幼子の素顔が透けて見える様な表情が返って来た。
「どうしたの、先刻言った事を聞いてなかったのかね?
私と再会して感激してくれているのは良く分かるが、お前はもっと実際家だと思っていたよ。
いやまぁ此の様な言い方は大変失礼で、私の方が悪いのだと充分に理解しているけれどね。
実務に差し支えるよ、そろそろ何時ものお前に戻っておくれ。
切れ者リーナスの名声を陰から支える黒子、忠臣にして権謀術策に通じた魔道王国の宰相。
アルド・ナリスと互角に競い合う叡智を秘める名参謀、
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