暁闇
マルガの群像
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「僕も、マルガに残ります。
一緒に、戦わせて下さい」
カラヴィア公の子息は憔悴した外見にも関わらず、強い意志を感じさせる声を出した。
「駄目よ、アドレアン!
気持ちは嬉しいけれど、貴方は病人なのよ。
貴方を戦いに巻き込んだりしたら、カラヴィア公に何て言えば良いの?
クリスタルでグインを助けてくれて、本当に感謝しているわ」
予想外の言葉に驚き、紫色の瞳を大きく瞠る神聖パロ王妃リンダ。
「私からも、感謝を申し上げます。
衰弱された御身体にも関わらず、リンダ王妃の救出に多大な御尽力をいただきました。
どれだけ、お礼を申し上げても足りません。
アドレアン様の御助力により、ナリス様も健康を取り戻される事になりました。
困難な闘いに初めて勝機が見えて来たのです、これ以上の勲功は御座いませんよ。
御父上のアドロン様も、アドレアン様の解放を要求して兵を挙げられました。
カラヴィア軍3万5千を率い、クリスタル南方にてレムス王配下の聖騎士団と対陣中です。
アドレアン様には、カラヴィア軍との合流をお頼みしたいと思案しています。
ナリス様と距離を置くアドロン様を説得し、味方に付ける事が出来るのは唯一アドレアン様のみ。
今のマルガは危険なまでに手薄、カラヴィア軍に警備を願えれば有難いのですが」
口数の少ない神聖パロ参謀長、ヨナ・ハンゼも傍から言葉を添える。
「おお、そうだわ!
一刻も早く、カラヴィア公にお知らせしなくては!!
すっかり忘れてしまっていたわね、早速伝令を出しましょう。
アドレアン様の無事を伝えて、アドロン様に対面していただかなくては」
カラヴィア公子の眼前で無邪気に声を弾ませる王妃、女神と崇拝する憧れの女性。
パロの真珠と称賛された予知者に異を唱える等、以前は有り得ない事であったのだが。
若き騎士は決意を秘めた眼の光に気付かぬ態の神聖パロ王妃、リンダの言を断固として遮った。
「僕は、マルガに残ります。
父はナリス様を支持する事に反対でした、翻意を何度も試みても僕には説得出来なかった。
何故、説得できなかったのか僕には解かりませんでしたが。
リンダ様を救う為に戦うグイン陛下を見ていて、解った様な気がします。
僕は、父に頼る事しか考えていなかった。
自分の力で戦う覚悟なんて、全然持っていなかったんだ。
カラヴィアの全領民に対する責任を持つ父が、そんな僕に協力する筈は無い。
そんな事にも気付かない程、僕は未熟でした。
僕はカラヴィア軍の武力に頼らず、自分の力で戦わなければならない。
グイン陛下は僕に、その事を教えてくれた様な気がします。
僕は父に頼らず自力でリンダ様をお護りする為に、此処マルガに残り皆と共に戦います」
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