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豹頭王異伝
暁闇
マルガの群像
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衰弱している外見とは裏腹に、アドレアンの言葉には以前の彼には無い剛いものがあった。

「わかりました、お志を有難く頂戴させていただきます。
 アドレアン様の御言葉を伝えます、カラヴィア公アドロン様も喜んでいただける事でしょう。
 ナリス様も数日後にはお戻りになります、今は御身体を御休めになってください。
 大変頼りになる御味方が誕生された事を、お喜びになられる事でしょう」
 張り詰めていた気が緩み、急速に意識が薄れ視野が暗転。
 ヨナの目配せを受け、下級魔道師が衰弱した若者の身体を受け止める。
 公子の潜在意識に憧憬の対象、リンダの優しい笑顔が投影された。

 リンダ聖王妃と勇敢な騎士、アドレアン公子の救出は時を移さず公表される事となった。
 古代機械の飛び去った方向が神聖パロ王国の拠点である事は、レムス側に知られている。
 マルガに集う味方の士気を上げる為にも、大いに宣伝すべきと参謀長ヨナは判断。
 離宮前で帰還を果たした聖王妃から、マルガ市民全員に向けた感謝の御言葉を賜る。
 劣勢は隠し難く重苦しい空気に包まれていた街中に、噂は瞬く間に広がり大勢の市民が歓呼。
 密かに最悪の事態を憂慮していた反動から、人々は熱狂して離宮前広場に押し掛けた。

「アドレアン公子、万歳!」
「リンダ王妃様、万歳!!」
 拳を突き上げ、絶叫を迸らせる大群衆。
 カラヴィア公子には気の毒だが、王妃の名を連呼する声が圧倒的多数を占める。
 リンダは胸を高ぶらせ、広場に集ったパロ市民に語り始めた。

「ありがとう、マルガの方々。
 私はケイロニア王グイン陛下の助けにより、此処マルガに脱出する事が出来ました。
 アル・ジェニウスは、今、新たに発見された特別な治療を受け眠っています。
 3日間は安静にしなければならないけれど、回復して元気な姿を見せてくれる筈です。
 パロに光の射す刻が、もうすぐ其処まで来ているのです。
 ヤーンよ、感謝致します」

 周囲の魔道師達が暗示波の集団催眠術を用い、リンダの声を増幅して送り出す。
 聴覚に障害を負った兵士や老人、耳に包帯を巻いた負傷者達にも明瞭な思念波が理解された。
「アル・ジェニウス、万歳!」
「神聖パロ、万歳!」
 マルガの民衆は熱狂し、叫び続けた。
 アムブラの私塾に学ぶ英才ヨナ・ハンゼ博士の盟友、カラヴィアのランも其の中の1人だった。

(あの時。
 俺達はアレクサンドロス広場で、モンゴール軍に虐殺される処だった。
 パロ聖騎士の白銀の鎧を身に纏い、アムブラの広場に颯爽と現れたナリス様。
 そして、パロは解放された。
 なんて、遠い昔の様に感じられる事だろう。
 ナリス様が御身体を回復され、指揮を執って頂ければ何とかなるかもしれない。

 到底勝ち
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