転換
煙とパイプ亭
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「済まないな、ダン。
俺に、力を貸してくれないか」
ダンは何故か困惑し、頻りに店の奥を気にしているが。
カメロンは疲労の為か挙動不審に気付かす、強張った筋肉を揉み解しながら柔和な笑顔を披露。
当たり障りの無い世辞の遣り取りに時間を浪費せず、真剣な表情で話し始める。
「アルセイスで、アムネリス様に子供が生まれたんだが。
初めての御出産で、精神的に不安定になっている。
無理もない、トーラスを離れて心細いんだろう」
モンゴール独立を企てる者が、アムネリス救出を企てるかもしれぬ。
大公家唯一の生存者を慕う人々は未だに数多い現状を忘れず万一の可能性を警戒。
新都イシュタールでなく、旧都アルセイスと偽る用心も忘れない。
「アムネリス様に、御子が?
そ、そりゃ、えらい事だ!
トーラスも酷い有様になっちまって、此の先どうなるかと思ってただけども。
わかんねえけど、おらは何をすれば良いんですか?」
カメロンは想定通りの反応、狼狽に微笑み肝心要の用件を切り出した。
「少しの間で良いから一家揃って、アルセイスに来てくれないか。
アムネリスは父上も弟御も失くしてしまい、家族は1人も残っていない。
子供が生まれたらどうすれば良いか、なんて事は全く知らないんだ。
ケイロニアの皇女タヴィアさんと同じ様に、モンゴールの大公様も普通の人間なんだよ。
オリー母さんが傍に居てくれれば心丈夫だ、一緒に赤子の面倒を見てやってほしい。
他に信頼出来る者が居なくてね、とても困っているんだよ」
ダンは何と言って良いかわからず、思わず口を噤んだ。
カメロンは温かい笑顔を見せ、太陽の如く動転と硬直を解きほぐす。
「ダンの家族も、大変だろう。
トーラスが酷い状況になってるのは、良く分かってる。
俺が言うのもなんだが、モンゴールは必ず建て直す。
アムネリス様と、お生まれになったミアイル様をお守りしてね。
新生ゴーラ王国のモンゴール大公領として、復興する様に力を尽くす。
モンゴールの為だと思って、力を貸してほしいんだ」
「で、でも、アリスが、赤ん坊が2人も生まれちまって…。
今、とてもじゃねえけど、アルセイスへ行くなんて…」
ダンが辛うじて出した言葉に、今度はカメロンが仰天。
「何だって!アリスに、赤ん坊が2人?」
カメロンは眼を閉じ、再びテーブルに突っ伏した。
ケイロニアへ去ったマリニアの代わり、と云う訳ではないが。
オリーも寂しがっている事だろうから、一石二鳥の妙案との下心もあった。
だが、まさか、こちらでも子供が産まれているとは思わなかった。
アリの一味が煙とパイプ亭を襲った際、ダンに酷い恐怖を味わわせてしまった負い目もある。
最初の赤ん坊
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