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占術師速水丈太郎 五つの港で
第三十八章
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第三十八章

「私が」
『ああ、それはですね』
「それは?」
『毛布は全部畳んでベッドの足元に置いてです』
「そうするのですね」
『その上に枕を置いて下さい』
 そうしてくれというのであった。
『そしてです』
「後は何でしょうか」
『シーツを一つにして置いてくれればです』
「それでいいのですか」
『シーツはクリーニングに出させてもらいますので』
 そうするというのである。彼から言ってきたのだ。
『ですから後はお気遣いなく』
「左様ですか」
『何はともあれお疲れ様でした』
 微笑んでの言葉だった。電話の向こうからもそれはわかった。
『これで』
「はい、それでは」
 ここまで話してであった。速水は電話を切ってすぐに江田島の幹部候補生学校を出てである。運命の輪を使って東京に戻った。そのうえですぐに事件のことを全て話したのであった。
「お地蔵さんがですか」
「そうです」
 こう彼に話すのであった。防衛省の一室で向かい合って座りコーヒーを飲みながらだ。事件の詳細を全て彼に話していたのである。
「まず横須賀はです」
「あの被害者ですね」
「首も手足も逆さにされて捻られて死んでいましたね」
「はい」
 そのことはもう彼も知っていた。
「その通りです」
「そのお地蔵様も同じようにされていました」
「壊されてですか」
「そして呉はです」
 続いてはそこの話であった。
「心臓に穴が開いていましたが」
「そのお地蔵さんにもですか」
「後は全部同じです」
「お地蔵さんの傷の通りに殺されていたと」
「それは何故かといいますと」
「祟りですか」
 男は静かに述べてきた。
「つまりは」
「簡単に言えばそうです」
 速水もそれだと言ってみせた。
「彼等はそれぞれお地蔵様にそう悪戯をしてです」
「その報いを受けたのですね」
「海軍の為に命を捧げた彼等のそのお地蔵様をです」
「祟りを受けて当然だというのですね」
 男はそこまで聞いて静かに述べた。
「つまりは」
「そういうことでしょう。そういえばです」
「はい、今度は一体」
「死んだ五人は全員艦艇要員だったそうですが」
「そうした職種の人間は全てあの呉の第一術科学校に入ります」
「そうですね」
 これはもう一度聞いて確かめたのである。そのことをだ。
「ではそこに行っている時にですね」
「五人共とかく素行が悪かったそうですから」
「はい、それは聞いています」
 実によく、である。速水もその都度聞いたことであった。
「既に」
「そうですか。ではもう」
「後はこちらでさせてもらいます」
「速水さんがですか?」
「そのお地蔵様の為にです」
 何かをするというのである。
「それで事件は全て終わりです」
「全てですね」

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