暁 〜小説投稿サイト〜
豹頭王異伝
転換
第二の基点
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
欲しがらない未開拓の荒地だった。
 ルードの大森林も謎の屍喰い、灰色の喰屍鬼《グール》が棲む魔の森と畏れられていた。
 ゴーラ皇帝領として残されていたのは、自給自足も困難だったからなんだ。

 サウル皇帝の騎士、ウラド・モンゴールは元々豊かな地方を奪って独立したんじゃない。
 細々と暮らす人達の先頭に立ち、豊かな生活を送る事が出来る様に発展させた指導者だ。
 オーダイン、カダインの辺りも数十年前は鬱蒼とした密林地帯だった。
 クムもユラニアも欲しがらなかった位、見捨てられた土地だったんだよ。

 ウラド大公は単なる独裁者じゃない、自由開拓民を組織して新たな道を切り拓いた勇者だ。
 だからこそ、モンゴールの人々は絶望的な状況にも屈せず連合軍に立ち向かった。
 クム軍が黒竜戦役の最後に現れ、モンゴール軍を壊滅させた時にも。
 アムネリスを護る為に最期まで戦い、1人の脱走兵も出していない。
 

 俺は痩せた土地を協力して開拓する人々の、真っ直ぐな気性が好きだ。
 肥沃な土地に安住しているユラニア人より、モンゴール人達の方が余程好感が持てる。
 団結して困難に立ち向かう国民性だからこそ、一時は世界最強の強国にまでなったんだと思う。

 お前は、父親の志を受け継いで、祖国の復興に尽くして来た。
 とても、立派な事だと思う。

 アムネリスが力を貸してくれたら、モンゴールは必ず建て直せる。
 俺は、モンゴールの人々が、自分の国を誇りに思える方向に持って行きたい。
 モンゴールの民は素晴らしい強力な味方となって、ゴーラを助けてくれるだろうしな」

 実直なダンの顔が、心に浮かぶ。
 盲目のゴダロ、オリーの笑顔も。


「トーラスには、馴染みの居酒屋があってね。
 下町に住む人達にも、毎日を幸せに暮らして行って欲しいと願っているんだよ。
 モンゴールの人々が、幸せに日々を送れる様になる事。
 それが父上の心に適う事、なんじゃないかな」

 息を殺し、闇に包まれた寝台の様子を窺う。
 微かに、気配が変わった様な気がする。

「今すぐに気持ちを変えようなんて、思わなくて良い。
 イシュトを憎んだ儘でいても、構わない。
 ただ、少しだけ待って貰う事は出来ないかな。

 ほんの少しだけで良いから、俺に時間をくれないか。
 お前はモンゴール大公国の亡霊に呪われて、判断を誤っている様に見えるんだが。
 俺がアリの亡霊に逆上して、サイデン宰相を斬った時みたいにな」


「…私、わからない。
 …何も、わからない。
 イシュトヴァーンを憎んでいるのかどうかも、わからなくなってしまった。

 …カメロン、貴方の言いたい事は、良くわかるわ。

 何て、私は弱いんだろう。
 何て、私は愚
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ