§3 現世を満喫する魔王
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居たんだよ?」
……嘘は言ってはいない。嘘は。出会ったのが恐ろしく昔であるだけのことだ。
「名前!! 名前はなんて言うんですか!?」
テンションがMAX状態の静花の発言に自己紹介をしていないことを思い出す。
「僕は水羽黎斗、コイツはエル。よろしくね」
エルもまた挨拶するかのように、こーん、と鳴いた。
「ふひぃー。ご馳走様でした……」
「すげぇ食べっぷりだったな…… 腹壊すなよ?」
千年振りの豪華な食事。ここでも黎斗は昼間のラーメン屋よろしく感激の嵐だった。口を開けば「おいしい」「うまい」「おかわり!」である。
「後半泣きながら食べてたよね……」
静花など途中から箸を止めこちらを見ていたくらいだ。
「……あ゛」
自らの所業を思い出す黎斗。
「ご、ごめんなさいぃ……」
穴があったら入りたい、とはまさにこの事だ。友達になったばかりの家に来て五、六杯もおかわりをして泣きながら食べる。やりすぎである。
「いやいや、ここまで喜んでもらえると冥利につきるねぇ」
そう言って笑う護堂の祖父に思わずジーン、とくる黎斗。
こーん。
ごそごそエルが荷物を漁る仕草をする。
「あ、そうだった。エル、ありがと」
思い出した黎斗は持ってきた荷物から一リットルのペットボトルを取り出す。中には透明の液体が並々と入っている。
「あの、これ。家から持ってきたお酒なんですけど。もしよろしければ、どうぞ。未成年は無理だからおじさんしか飲めませんけど勘弁してください」
例によって権能で作ったものだ。少名毘古那神の権能の一つ。一週間に一リットルだけ液体から酒を生成でき、アルコールの濃度や味を自在に変えられる。好みの味を作れるが数量制限のせいで須佐之男命と2人で酒盛りをするときくらいしか役に立たない能力。メタノールなどを作り出しても、神との戦いに有効か、と言われれば疑問符がつく。エル曰く「微妙すぎる能力」である。こういう時には役立つのだが、贈り物をするような相手はここ数百年いなかったので使った記憶があまりない。
「おや、これは随分と美味しそうなお酒だね。ありがとう、あとでいただくよ」
「あ、そう見えます? よかったー」
護堂の祖父の言葉に何故か自信げな黎斗。能力で作ったくせに偉そうに言うな、と言わんばかりにエルが飛びかかってきた。
笑い声に包まれる食卓。夜は更けていく。
「みなさん、いい人達でしたね」
時刻は9時を回り、黎斗とエルは草薙一家にお礼を言って帰路についた。黎斗は包みを抱えている。
「こっちに越してきたばかり、それも一人暮らしは大変だろう? 余り物で申し訳
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