第二十七話 そろそろ先が見えたかな
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…。
出兵賛成派がシトレの代わりに選んだのがドーソンだ。能力はそれほどでもないが政治家のいう事を良く聞く、それだけで選ばれた。選ばれたドーソンはイゼルローンに到着する前に、いやハイネセンを出立する時には遠征軍に対して積極的に帝国領内へ侵攻するようにと命令を出していた。シトレが消極策で首を斬られたとなればドーソンは嫌でも積極策に出るだろう。まして上の顔色を見る男なら……。
その結果がこの騒ぎだ。案の定、軍は補給が破綻しかかり政府に補給物資の要請をしてきた。そして政府はもう三日も討議を続け、未だに結論を出せずにいる。遠征賛成派も内心では頭を抱えているだろう、だが撤兵を受け入れられない、受け入れれば政治生命が絶たれると恐れている。だから訳の分からない理由を捏ね繰り回している。
シトレが指揮を執っていた時には占領地の民衆は一千万人程度だった。それでも危険だと悟って警告をしてくれた。それがあの馬鹿に代わった途端一カ月もしないうちに補給が破綻すると騒ぎ出した。本人はイゼルローン要塞に着いて一週間も経っていないだろう……。
「レベロ委員長の言う通りだ、ここは撤退すべきだろう。幸いイゼルローン要塞が有る、あれさえ確保していれば帝国の侵攻は防ぐことが出来るのだ。先ずは国内の問題に専念すべきだろう」
「……」
ホアンが私に加勢した。誰も意見を述べようとしない。出兵賛成派は渋い表情で顔を見合わせるだけだ。
「……暫く休憩しよう……」
サンフォード議長が疲れた様な表情と声で休憩を宣言した。
皆が席を立ち思い思いに散らばるとホアンが私に近付いてきた。
「どう思う、連中は諦めるかな? ホアン」
「まだまだだ、そんな甘い連中じゃないさ。ここで撤退を認めたら政治生命は終わりだと考えているはずだ」
思わず舌打ちが出た。
「連中の政治生命よりも同盟の政治生命の方が先に尽きてしまうぞ、このままじゃ」
ホアンが肩を竦めた。
「気付いているか、レベロ。トリューニヒトが何も言わない。出兵に反対した癖に今は沈黙している、何を考えているのか……」
「長引けば長引くほど出兵に賛成した連中は深みに嵌る、そう思っているんだろうよ。あのクズが!」
私の悪態にホアンが苦笑を浮かべた。
会議が再開するとサンフォード議長が“聞いて欲しい”と言った。自ら率先して口を開くなど珍しい事だ、嫌な予感がした。
「遠征軍から報告が入っている」
軍から? トリューニヒトを見た。眼を閉じて腕組みしている。
「我が軍将兵に戦死の機会を与えよ、このままでは不名誉なる餓死の危機に直面するのみ」
部屋が凍りついた。トリューニヒトは眼を閉じて腕組みしたままだ。こいつ、知っていたな。いやこいつがサンフォード議長に渡した、説得する道具として……。
「この状況では補
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