第百三十八話 羽柴の帰還その六
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だがかなり疲れが見える、秀長もほっとしながらも今にも倒れ込みそうな顔になってそのうえで兄に対して言った。
「夢の様ですな」
「うむ、生きておるな我等は」
「はい、確かに」
「何度死にそうになったか」
羽柴も疲れきった顔で言うのだった。
「生きておるのが夢の様じゃ」
「ですな、まことに」
「まずどうする」
羽柴はほっとした顔で秀長に問うた。
「殿の御前に出てからは」
「まずは飯を食いますか」
「それか」
「そして湯に入り」
几帳面な秀長らしく身を確かにしてからと言うのだった。
「それで寝ましょうぞ」
「そうするか」
「はい、そうしましょうぞ」
こう言うのである。
「ゆっくりと」
「そうじゃな、たっぷり寝たいからな」
「ならば飯を食って身体を綺麗にして」
それからだというのだ。
「それからにしましょうぞ」
「うむ、そういうことじゃな」
「それでなのですが」
秀長は今度は周りを見た、既に明智や大谷達は都に入り休んでいる。獅子奮迅の働きをした七人の若武者達がいる、彼等も皆疲れきっている。
その彼等を見てだ、兄に言うのだ。
「我等だけではとても生き残れませんでした」
「だからじゃな」
「はい、彼等の功を殿に申し上げましょう」
「そうじゃな、我等のことはどうでもいい」
「我等は既に充分な禄を頂いていますし」
「母上とねねのことさえよければな」
「それに姉上と旭のことも」
二人の姉妹の話もされる、だが彼等自身はいいというのだ。
「それで充分ですな」
「そうじゃな、ではじゃ」
「まずは殿の御前に参り」
「挨拶をしようぞ」
今にも眠り込みそうな有様だが何とか生きて帰ってきた彼等だった、具足も陣羽織もぼろぼろだが彼等は生きていた。
そのうえで信長の前に戻った、この場は特に深く話すことはなかった。
それで飯と湯の後でじっくりと寝た、そのうえで起きてからだった。
再び信長と主な家臣達に後詰の戦の時を話す、それを聞いて羽柴に最初に問うたのは柴田であった、彼は意外といった顔で羽柴に問うた。
「待て、朝倉の軍がか」
「はい、これが夜に随分強くなり」
「苦労したというのか」
「左様です」
「朝倉の軍は夜の戦は強かったかのう」
柴田は朝倉の軍勢が夜強かったことにいぶかしんだ。
「そんなことは聞いたことがない」
「それがしもそう思っていましたが」
羽柴もこう柴田に返す、彼も意外といった顔である。
「ですが」
「それでもか」
「はい、随分強かったです」
「夜はか」
「数は二万、まるで夜の雪崩の如きでした」
「ううむ、そうか」
柴田は信じられぬといった顔のままだった、そのうえで袖の下で腕を組み言うのだ。
「あの朝倉の軍勢が」
「朝倉の軍勢は大した
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