第百三十八話 羽柴の帰還その四
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「それと鉄砲に長槍にな」
「我が家はそうしたもので戦をしていますな、確かに」
前野も佐久間のその言葉に頷く。
「それぞれの強さではなく」
「兵が弱くとも戦の仕方があるということじゃな」
「ですな、で仕切りなおしても」
「勝つとしようぞ」
「次の戦は」
こう話してであった、彼等は退いて帰ってきたとは思えぬ程意気揚々と都に戻った、都に戻るとやはり彼等も民達から熱い声を受けたのだった。
その中には家康もいた、彼が都に戻るとすぐに氏真が戻って来てこう彼に言ってきた。
「よく帰られた」
「氏真殿も都におられたのですか」
「そうじゃ、まあ今は湯に入ってな」
「それで戦の垢を落としてですか」
「茶でも飲み落ち着いて話そうぞ」
「さすれば」
こう話してそうしてだった、家康は氏真に案内されてまずは湯を馳走になった。その時は氏真も徳川の主だった家臣達も一緒だった。
それからだ、家康は氏真と茶を飲みながらそのうえで話をするのだった。
「竹千代殿は高田という家を御存知か」
「高田とか」
「公卿の家でおじゃるが」
「いや、どうも」
氏真の淹れた茶を飲みながらだ、家康は首を傾げさせて応えた。
「知りませぬ」
「左様でおじゃるか」
「はい、氏真殿は御存知なのですか」
「麿もこれまで知らなかったでおじゃる」
氏真は駿河にいた頃と変わらぬ公家言葉で語る。
「そうした家があったとは」
「してその高田とはどういう家なのでしょうか」
「何でも陰陽道、いや」
氏真は首を傾げさせながら家康に述べる。
「それより怪しげな」
「といいますと左道ですか」
「どうでおじゃるか」
左道と言われてもだ、氏真はここで首を傾げさせる、またしてもそうしたのだ。
そしてだ、こう言ったのである。
「左道ともなると」
「流石に朝廷にはおられませんか」
「そういうことをする輩がいるとは聞いているが」
それでもだというのだ。
「麿もその目では見てはいないでおじゃる」
「それがしもいるとは聞いていますが」
家康もこうした返事だった。
「ですが」
「そうでおじゃるな」
「はい、そうした術を使う者は実際にいたとしても」
「まず表には出ないでおじゃる」
「ましてや朝廷には、ですな」
「いないでおじゃるな。それに」
しかもだというのだった、ここで。
「朝廷には陰陽道があるでおじゃる」
「安倍家に賀茂家ですな」
「そうした家があるでおじゃるから」
「いても気付かれますか」
「安倍殿も賀茂殿もかなりの力の持ち主でおじゃる」
当代の彼等にしてもだというのだ、かつての安倍清明程ではないにしてもやはりそれなり以上の力は持っているというのだ。
「その方々に気付かせぬとは」
「相当な方ですな」
「そこまでの
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