第三十三章
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第三十三章
「その千葉茂です」
「私は巨人の選手と覚えていましたが」
「そうだったのですか」
「何故そこで近鉄の監督なのですか?」
後藤はそれがどうしてもわからないといった顔で速水に問うてきた。話をしている間に港の門をチェックを受けて通りそのうえで道路の向こうの総監部へと向かっていた。
「どうしてまた」
「それはです」
「はい、それは」
「私が巨人が嫌いだからです」
それが理由なのだという。
「私はヤクルトが好きですから」
「ヤクルトがですか」
「はい、だからです」
あくまでそうだと話すのであった。
「ですから巨人はです」
「嫌いなのですか」
「私は自分の住んでいる場所のチームを贔屓する方でして」
彼が今住んでいるのは東京である。だからだというのである。
「ですから」
「巨人も東京ですが」
「巨人は自分のチームの名前にすら東京と入れていません」
速水が指摘したポイントはそこであった。
「それではとてもです」
「東京のチームとは言えないと」
「私はそう考えています」
有無を言わせないまでのはっきりとした口調であった。
「巨人についてはです」
「左様ですか」
「ですから私はあえて近鉄の監督と表現したのです」
「あまり昔の話ですからわかりませんでした」
「左様ですか」
「私の親父が子供の頃の話ではないですか?」
後藤は首を捻りながら述べた。
「昭和の何時頃ですか?」
「三十年代です」
「ではやはりそうです」
そこまで昔だという。確かに相当な過去の話である。
「私は影も形もありません」
「当然私もです」
「それを考えますと過去ですね」
「そうですね。言ってみても実感します」
速水自身もそうであった。
「確かに」
「かなりの。しかしカツカレー自体はです」
「いいものですね」
「それでなのですが」
そのカツカレーの話に戻るとであった。二人は自然と饒舌になりだ。そのうえで話をしていくのであった。
それからカツカレーを楽しみ舞鶴を後にした。また運命の輪のカードを使いそのうえで向かったのはである。今度は佐世保であった。
「さて」
まずは佐世保のその長い商店街に来ていた。何処まで続いているかさえもわからないまでに長い。左右には店が立ち並び人が行き交っている。道は商店街にしてはかなり広い。
その商店街から基地に入る。今度も一等海尉が出て来た。少し小柄で太った細い目の若い男である。彼は速水に敬礼するとすぐに名乗ってきた。
「小川です」
「小川さんですか」
「速水丈太郎さんですね」
「はい」
もう彼の話はいっているようであった。話の展開がこれまでより早かった。
「その通りです」
「お話は聞いています」
また言ってきた小川であった。
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