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占術師速水丈太郎 五つの港で
第三十二章
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第三十二章

「このことは御存知でしょうか」
「確かそうでしたね」
 このことは速水も知っていた。以前海上自衛隊で事件の解決を引き受けたことがあるからである。あの横須賀の海でのことは彼は今もよく覚えていた。
「金曜日は。曜日の目印という意味でも」
「栄養も摂れますし」
 それも理由なのだという。実際に軍隊にカレーが取り入れられたのはカレーが様々な野菜が入り肉も入れられるからである。それで栄養を摂りやすかったからなのである。
「だからなのです」
「そうでしたね。それでは」
「今日は金曜日ではありませんがカレーが出ます」
 また言ってきた彼であった。
「如何でしょうか」
「いいですね」
 速水もまた微笑んだ。カレーと聞いてである。
「では御言葉に甘えまして」
「カレーはどういったものが好きですか?」
「カレーなら何でも」
 これが返答だった。実際カレーはカレーならば何でも好きである。
「ですから」
「そうですか。それではですね」
「何カレーをいただけるのでしょうか」
「カツカレーはどうでしょうか」
 後藤が提案してきたのはそれであった。
「それを今総監部の食堂で出しています」
「カツカレーですか」
「それです。それとサラダとゆで卵、それにミルクの組み合わせです」
「いいですね」
 他のメニューも聞いてさらに微笑んだ速水であった。
「それでは御好意に」
「カツカレーもいいものですね」
「はい、確かに」
 速水は微笑み続けている。本当にカレーが好きなのである。
「カツだけでも見事だというのに」
「カレーの味もありますから」
「あの組み合わせは不思議なまでの絶妙さがありますね」
 足は自然とその総監部の食堂に向かっていた。二人で港を出てそのうえで速水から見れば総監部に戻っている。そのうえで話をしていた。
「食べていて病みつきになります」
「全くです。確かあのカレーができたのは」
「戦後でしたね」
「そうですね。比較的新しかったですね」
「考えたのは元近鉄の監督だった千葉茂です」
 速水はその考え出した人間も知っていた。
「彼が考えました」
「近鉄の監督だったのですか」
「はい、そうです」
「確か千葉茂といえば」
 しかしであった。後藤はその名前を聞いてである。怪訝な顔で少しずつ近鉄とは別のチームの名前を出してきたのである。そのチームはというと。
「巨人の選手だったのではないですか?」
「巨人ですか」
「確かそうだったと思いますが」
 こう速水に言ってきたのである。
「私の記憶が正しければ」
「守備位置はセカンドで」
 すると速水も流れる様に言ってきた。
「仇名は猛牛、背番号は三でした」
「三だったのですか」
「長嶋茂雄の前の背番号三でした」
 そうだっ
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