A’s編
ボクが”殺した”
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あのプリクラを撮ったあと、オレたちは帰宅していた。
「ねえ、兄さん」
横に並んで歩いていた紗羅が急に立ち止まり、言う。
「どうしたんだ、紗羅」
「今日は、楽しかった・・・?」
もちろん。
そう言おうとしたが、口が動かない。
「やっぱり兄さんは”なんとなく”でしか覚えてないんだね。あの事件のこと」
事件・・・?
オレが生まれてから、事件と呼ばれるようなことはなかったはず・・・。
「そうだね。うん、今の兄さんは知ってなくてもおかしくないのかな?あの事件は、この世界では起こってないから。本当ならもう起こってる」
もう、起こっている・・・?
なぜ紗羅の知っていることを、オレが知らない?
なぜオレが知らないことを、紗羅が知っている?
「いや、やっぱ兄さんは知ってるよ。ただ、記憶を封印しているだけ。あの、」
___わたしとお父さん、お母さんが死んでしまった、事件のことを。
死ん・・・だ?でも、ここに紗羅はいる。両親だって、今朝会った。
なぜ?
その事件はこの世界では起きないから。
どうして?
・・・どうして?
わからない。
知っているはずなのに、オレはそれを知らない。
「兄さんはただ、記憶を封印しているだけ。でも、わたしはその封印を解くことができる。ねえ、兄さん。兄さんは思い出したい?わたしたちが死んでしまった事件のことを」
そんなの、知りたいわけが・・・。
「その結果、出会った、新しい家族のことを」
新しい、家族・・・?
「そう。この記憶を思い出せないのはきっと、忘れさせられたのかな。で、どうする?わたしとしては、どっちでもいいよ?どっちにしろ、わたしの行動は変わらない」
紗羅はそう言い、一度目を閉じてから、改めてオレに向き直る。
「わたしはずっと、兄さんを見守り続けてきた。だから今回も、わたしは兄さんを守ってあげる。知らないことを望むなら、わたしも知らないフリを続けて、ここを兄さんが望む永遠の楽園にする。兄さんが思い出したいのなら、封印を解いて、あの人たちのところへ送り届けてあげる」
あの人たち・・・?
「そう。兄さんもすこし覚えてるよね。今日、ずっと頭に声が響いてた。ちがう?」
紗羅の言うとおりだった。
ところどころにデジャブを感じ、大切な人の声が聞こえていた。
「どうする、兄さん?」
オレは・・・オレは、思い出したい。
「思い出して、オレは今いるべき場所に、帰りたい」
「そう言うと思ってたよ、兄さん。じゃあ、バイバイ、だね」
「え・・・?」
紗羅の声を最後に、オレは意識を落とした。
次に目を覚ましたのは、放課後の教室だった。
「なあ大吾、知ってるか?あ
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