第二部 文化祭
第31話 星空
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「……キリト君?」
「なんでもないです。じゃあ俺、着替えてくるよ……」
アスナが満足げに微笑んだ。
数分後。
「待たせちゃったな。悪い」
「そんなに待ってないわよ。ていうか……私服ほんとにテキトーだね、きみ」
「む……」
改めて自分の格好を見ると、黒シャツに同色のズボン、これまた同色のパーカーという簡素なものだった。
「……男が服にこだわっても仕方ないだろ。着れればいいんだよ、着れれば」
「もう……」
同時に、腕組みするアスナの服装を一瞥する。
白いセーターと赤チェックのスカートを着ていて、胸元にはプラチナのペンダントが光っている。
──なにか言うべきなのだろうか。
俺はこほんと1つ、咳払いをした。
「どうしたのキリト君、風邪……?」
「いや、まったく。その、あの………に」
「に?」
アスナが首を傾げる。
元々美人なアスナだが、この仕草が更に可愛らしさを高めている。
「似合ってますね、服」
俺がぼそぼそ言うと、何故だかアスナの顔は林檎のように真っ赤に染まった。
「……ちゃんと言えるようになったじゃない」
「えっ?」
「ちょっと前だったら、会ってから時間超経過してからしか言えなかったのに」
「そ、そうだっけ?」
「そうだよー。ふふ、キリト君可愛い」
「か、可愛いって」
ふいに、アスナの指先が俺の鼻に触れた。アスナはその指をちろりと舐めながら言う。
「あんこついてたよ。いったいなに食べたらそんなところにつくの?」
「えっ!? あ、あの……あんまんです、はい」
たどたどしい俺の言葉に、アスナは柔らかく微笑んだ。
──イミテーション・タウンにて。
「わ、わあー。わたし、夜には来たことなかったのよね。イルミネーションがすっごく綺麗だし、星まできらきら輝いてるし、なんだか年中クリスマス気分だね!」
アスナがわあ、すごい、きゃーと歓声を上げている。
──変わったよなぁ。
アスナは数年前まで、勉強にしか興味を示さず、他人にも自分にも厳しかった。あの頃のアスナなら、こんなに楽しそうにせず、「夜に模擬街へ来るだなんて、時間の浪費だわ」とか言っていたことだろう。
あの頃のアスナも凛としていてすごく魅力的だったが、今のアスナはその何倍も輝いて見える。
「あ、キリト君見て!」
「え……?」
アスナの右手が、俺の左腕を引っ張る。彼女の左手は夜空を指差している。夜の帳に包まれた空に、たくさんの星々が輝いていた。
「綺麗だね……」
満天の星空の下、アスナが感嘆の声をもらす。
確かにものすごく綺麗な星空だ。けど、更に一際まばゆく輝くものがある。俺の傍らにある、白い肌、栗色の髪。それらはこの世のど
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ