大会〜準決勝 後編〜
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れを理解して、ラップは小さく笑った。
ワイドボーンが認めるわけだね。
あの誰とも関わりを持たないたった一人の天才であり、偏屈な人物。
それが認めた唯一の人物。
すでに前衛を破られたラップの艦隊は、大きく艦隊陣形を乱している。
それをワイドボーンが見逃すはずもない。
一撃によって大きく疲弊したローバイク艦隊を上手く後ろに下げて、ゆっくりと見えるのは必殺の鋒矢の陣形だ。
見事。
小さく呟いたラップは、もはやコンソールを叩くこともやめていた。
+ + +
『本大会。Cグループ代表ラップ、Eグループ代表ワイドボーン……総司令官ラップ候補生の戦死を確認。損傷率64.3%と38.2%により、ワイドボーン艦隊の勝利です』
機械的な音声がワイドボーン艦隊の勝利を告げた。
観客席がない静かな空間では、筺体をあげる駆動音だけが鳴り響いている。
空気の抜ける圧搾音とともに、開かれた筺体でそれぞれのチーム員が外の明りに目を細めていた。
決勝大会では一試合につき、一日が使われる。
数時間もの長時間を拘束されるために、筺体内では簡易のトイレが置かれているが。
筺体が開かないうちに、ミシェルが慌てたように飛び出した、
走り出す姿に、誰も止める様子はない。
テイスティアはぐったりと筺体の中のコンソールに顔をうずめている。
ワイドボーンが開いたのを確認して、小さく笑みを浮かべながら立ち上がる。
視線を向けるのは敵ではない。
アレスだ。
この戦いを決定づけたアレス・マクワイルドは――少しの嬉しさを見せることもなく、ワイドボーンに小さく手をあげて、自動販売機を目指す。
アイスコーヒーを取り出して、小さく音を立てて蓋を開けた。
そんないつもの様子に、ワイドボーンは苦笑する。
「見事だったよ。負けたね」
かかる言葉に、ワイドボーンが振り返れば、そこに敵の総司令官であるラップの姿がある。
「ふん。負けたというのに随分気楽なものだ」
差し出された手を握ろうともせずに、答える様子にラップは小さく苦笑した。
それでもその手を戻そうとせず、ラップは笑みを消す。
「正直、僕は今回優勝するつもりだった」
「当たり前のことだろう。最初から負けることを考える屑がいるものか」
「ああ。君が一人ならばね……だけど、良い仲間に巡り合えたようだ」
その言葉に対して、ワイドボーンは嫌そうな顔を浮かべた。
いまだに突っ伏すテイスティアを、そして、ゆっくりと筺体から姿を見せるローバイクを――最後に、アイスコーヒーを飲むアレスを見て、ゆっくりと唇を持ちあげる。
「ふん。勝ったというのに、総司令官に何の言葉もない。薄情な奴らだ」
「君の部隊らしくて、良いと思
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