大会〜準決勝 後編〜
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「ラップは間違えてはいない。ただ、相手が悪い」
誰にも聞こえないように呟かれた声を、スーンははっきりと聞いた。
視線に気づいて、ヤンが顔を動かす。
見ていたことを気づかれぬように、スーンは慌てて顔を正面へと向けた。
正面では、艦隊が最後の戦いへと向かっていた。
おそらくはラップも――アッテンボローも戦いを急ぐ選択をした。
わずか数秒が、実際の時間では数時間に相当する。
その中では、わずかな時間が遅れとなる。
最悪は別働隊が、アレス艦隊に敗れることも想定したのではないだろうか。
その前に決戦するために、別働隊への状況確認を遅らせた。
普通であれば、それは正しいだろう。
だが、その確認不足が――今回の戦いの勝敗を決した。
一気に攻勢を行ったアッテンボロー艦隊に、ワイドボーン艦隊は戸惑った。
死兵となったアッテンボロー艦隊は、攻撃を仕掛けたとしても向かってくる。
当然。全てを撃破することも出来ずに、艦隊陣形は崩れてしまう。
艦隊に隙が生まれたところを、右からラップ率いる七千隻が奇襲を仕掛けた。
ワイドボーン艦隊の左翼を担うローバイク艦隊は、冷静に受け止める。
だが、元々正面への攻撃を想定していた陣形だ。
ラップの攻勢に、ローバイク艦隊は次々と撃ちとられた。
ワイドボーン艦隊への道が開ける。
届く。
既に五百隻を割り込んだ艦隊で、アッテンボローは勝利を確信した。
と。そこに映ったのは青い――青い――敵艦隊を知らせる表示。
「くそっ」
小さく呟いた声をそのままにして、アッテンボロー艦隊は溶解した。
+ + +
なんと……。
ラップは映される表示に、感嘆の声をあげた。
奇襲とはいえ、わずか四千隻で六千隻もの艦隊を殲滅する。
それは想定されていたことだが、想定外だったのはその時間だ。
アッテンボローが帰還して、ラップが攻勢を仕掛ける。
迂回して、いつ戦闘が始まったかはわからないが、それこそ鎧袖一触――移動と同時に六千隻を殲滅したのだろう。
その勢いをそのままに、正面への攻勢を仕掛けていたアッテンボロー艦隊を打ち破り、こちらの前衛に食い込んできている。
あと少しで手が届くであろうワイドボーン艦隊に、執着をする場合ではない。
自分とともにいた一学年に指示を飛ばすが、満足な防御陣をとれるわけもない。
勢いをそのままにして、突撃したアレス艦隊によって一気に半数近くの艦隊が持って行かれた。
そのあまりの攻勢に、彼の異名を深く理解する。
烈火のアレス。
元々はワイドボーンに対して、あまりに苛烈な様子から名づけられた。
だが、この燃え広がる勢いを止められるものはいない。
そ
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