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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第17話 「捕虜交換」
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もしれん」
「そして和平もしくは休戦が成立すれば、それは長期間に渡ると考えられる。今の皇帝は健康状態が悪い。確実に次の皇帝は、ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウムだ。あの皇太子殿下、まだ二十歳そこそこだろう」

 百五十年近く戦争を続けてきて、ようやく和平交渉の目がでてきたか。

「しかし取り扱いには注意が必要だぞ。あの皇太子、怒らせると怖い。今回のフェザーンに対するやり口を見たろう」
「皇太子の人となりはどうだ? 情報部は調査しているんだろう」
「そうだな。報告では二面性が強い。この場合、公人と私人。公的な面と私生活の面だがね。例えば、あえて例えばの話をするが、メイドに自分のケーキの苺をつまみ食いされても、激怒する事はないだろう。列に割り込みされてもね。しかし軍の物資をちょろまかしたりすると、それがほんの僅かであっても、処分は苛烈なものになる。温情は期待しない方がいい」

 つまり私生活では寛容。公務は厳格ということか……。まともだな。ようやく帝国にもまともな後継者が現れたのか。
 どうにかしてあの皇太子が和平を考えているうちに、交渉に入る事が出来れば良いんだが。
 帝国宰相に就任するとほぼ同時に、劣悪遺伝子排除法を廃法にしたことといい。税制改革。貴族領に対する課税。辺境開発。このままいけば、帝国は国力を回復するどころか、増大する。
 翻って同盟は、社会疲弊がひどくなっている。
 だがまだ間に合う。
 今ならまだ間に合うんだ。
 戦争を止める事さえ出来れば……。

 ■MS開発局 ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム■

 久しぶりに。本当に久しぶりにここにやってきました。
 MS開発局よ。私は帰ってきたー。
 おーれーのクシ○トリアぁ〜。
 るんるんとばかりにクシ○トリアを見に行くと、隣に見慣れない機体があった。
 あれ?
 まさかあんなものが、あろうはずがない。

「ちょいと、お聞きしますがね。“あれ”はなんだ」
「いや〜さすが、皇太子殿下。お目が高い。あれは我がMS開発局が試作いたしました機体。その名も雄々しく、ア○ガイです」
「あははは。そうか、ア○ガイかぁ〜」
「そうです。ア○ガイです」
「そんなもん、どこで使うんじゃぁ〜」

 思わず殴ってしまった俺は悪くない。
 しかもズゴ○クじゃなくて、ア○ガイかよ。潜水用のMSなんぞ作るなよぉぉぉぉ。
 使い道ねえだろうがぁ〜。

「男の浪漫です。貴族の嗜みといっても宜しい」
「お前ら、浪漫を求めすぎだ」
「こういうものがあって欲しいな。あってくれたほうが楽しいな。
 我々は浪漫派なのです」
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