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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第17話 「捕虜交換」
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殿下がぼそっと呟かれました。

 ■フェザーン 高等弁務官事務所 ヨッフェン・フォン・レムシャイド伯■

 本日、皇太子にして帝国宰相閣下たる。ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム皇太子殿下の声明が、全宇宙に向けて発せられた。

「今頃は同盟の弁務官も、慌てふためいている事だろう」

 全宇宙に恥を晒されたのだからな。
 それにしても皇太子殿下ときたら、やる事がおもしろい。
 普通ならなんとか交渉しようとするものだが、あっさりと無視なされた。これでフェザーンも今までのように大きな顔は出来ぬ。
 無能……役に立たぬと判断されてしまったのだ。
 次に皇太子殿下がどうでてくるのか……。
 さすがにいきなり、自治権を取り上げたりはすまいが。自治領主の首を挿げ替える事ぐらいは、言い出されるだろう。
 そして拒否すれば、どうなる?
 独立の、自由の、気質のといってみても。
 建前上、フェザーンは帝国の自治領に過ぎぬ。帝国宰相である皇太子殿下に本気で、上から命ぜられれば、従うほか術がない。
 本来はそうならないように、うまく立ち回るのが、自治領主の役割なのだがな。
 同盟に足を引っ張られたな……。
 これからはフェザーンも殿下の顔色を伺うことになろう。
 地位と血統。皇帝陛下との関係。その上、軍と帝国内最大級の大貴族であるブラウンシュヴァイク公爵家、リッテンハイム候爵家を従えているのだ。
 強い。いや――強すぎる。
 こうなると誰もが次に考えるのは、暗殺だろう。
 帝国と同盟、この二つのパワーバランスが傾きすぎている。同盟側との戦争よりも、なんとかして皇太子殿下を亡き者にしようとするはずだ。
 フェザーンの動きはしっかりと監視しておかねばならぬな。

 ■自由惑星同盟 ジョアン・レベロ■

「皇太子の声明を聞いたかね」
「弁務官が無能だというのは知っていたが、帝国側から指摘されるとは」

 シトレが皮肉げに言う。笑い事ではない。
 とうとうあの皇太子が帝国内ではなく。フェザーンと同盟にも手を打ってきたのだ。

「軍としてはどう考えているんだ?」
「軍としては……いや、それを考えるのが政治家の役目だろう」
「フェザーンを屈服させに来てるのだろう」
「だろうな。ただ純軍事的には、今の現状をしばらくは維持すると思われる」
「なぜかね?」
「気づいていたか? あの皇太子が帝国宰相になってからというもの、外征を行っていない」
「イゼルローンで同盟軍は、ほぼ壊滅したが」

 私がそう言うとシトレの口元が歪んだ。だが気を取り直したように、再び口を開く。

「こちらから出兵しない限り、帝国側は出兵しないとアピールしてきているのかもしれん」
「だとすると和平も可能だ。あの皇太子となら和平交渉も可能か
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