第一章 [ 胎 動 ]
十三話 帝都防衛戦 後編
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ら否定してくれるんじゃないか、そんな期待をしながら。
「…ねぇムツミ…虚空は…死んだの?」
ムツミは顔を伏せるだけで何も言ってくれなかった。でもそれだけで十分だった。理解してしまった。認めてしまった。虚空は死んだのだと。唐突に虚空との思い出が頭の中に流れる。
最初から無礼だった事、からかわれた事、遊んだ事、馬鹿にされた事、頭を撫でられた事、そして…………約束した事。沢山の言葉がわたしの中で溢れた。そんなわたしの口から漏れたのは、
「……う…そ…つき……」
たった一言。あとはもう泣き声しか出なかった。ムツミにしがみ付きわたしはただ泣き続けた。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
冷たい。
冷たい何かが僕に圧し掛かっている。どうやらうつ伏せで寝ていたようだ。とりあえず上体を起こす。
どさっ、と音をたて僕に圧し掛かっていた物が落ちた。粉みたいな白くて冷たい物。
「………雪?」
そう雪だ。周りを見渡すと一面が白い。無限に続いているんじゃないかと錯覚するほどの雪原。
頭がボーっとする。ひどく眠い。このまま眠ってしまおうか、そんな事を思った時、手に何かを握っている事に気付いた。
ゆっくりと開いてみる。そこには輝夜から預かったペンダントがあった。それを見た瞬間、自分がしないといけない事をはっきりと思い出した。
ゆっくりと立ち上がる。目の前には変わらず雪原が広がっている。あれからどうなったのか?これからどうするか?考えなきゃいけない事は沢山ある。でも、とりあえずは進もう、立ち止まっていても仕方が無い。
真っ白い世界に足を踏み出す。生きる為にただ前に進んでいく、空からはパラパラと雪が降っている。
僕が残した足跡もすぐに消えていくのだろう。それでも僕には進む事しかできない。叶うかどうかも解らない儚過ぎる願いが僕を動かす唯一の希望だ。
白い闇の中をただ歩いていく。
それが僕の物語の始まりだった。
第一章 [ 胎 動 ] 完
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