第二十二章
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第二十二章
そのうえで一斉に乗ってであった。競争をはじめていた。岸辺からも声がする。
「急げ!負けてるぞ!」
「そこ!何やってんだ!」
「だから遅いんだよ!」
怒号さえある。その中で短艇が動いていく。そうしてであった。
速水はそれを近くに来て見ようとする。その彼のところに誰かが来た。それは細木であった。彼は速水のところに来るとあの笑顔でまた言ってきたのであった。
「これはですね」
「これは?」
「海上自衛隊幹部候補生学校名物のですね」
「といいますと」
「総短艇なのです」
それだというのである。
「これがです。総短艇というのです」
「これは一体」
「何時如何なる時でも早急に動けるようにとの訓練でして」
細木の言葉は続いていく。
「こうしていきなり放送をかけて行かせるものです」
「これも訓練ですか」
「私も候補生時代はよくやらされました」
笑顔のまま速水に話すのであった。
「いや、懐かしいですね」
「懐かしいですか」
「これを見られたとは運がいい」
「運がいいですか」
「はい、実にいいです」
そうだというのである。
「名物を見られたのですから」
「起きるのが遅ければ見られませんでしたね」
「丁度今起こしに行かせてもらうところでした」
「今からですか」
「朝食にです」
それにだというのである。
「そうしたらここでばったりという訳です」
「成程、そうだったのですか」
「そういうことです。では朝食ですが」
「はい」
「こちらです」
こう言って食堂に案内された。そこで白米と味噌汁、それに納豆と玉子焼きといったボリュームを感じさせる朝食を食べてからだ。彼の一日が本格的にはじまった。
食事の後は歯を磨き顔を洗った。それから捜査をはじめるのであった。
部屋を出る前にベッドだけは簡単に直した。それからであった。
細木に今日は七時に帰ると話して学校を出る。まずは江田島を歩いて回ることにした。時間はようやく七時を回ったところである。
江田島を歩き回ることにしたのは理由がある。学校を出る時にカードを引いた。するとそこで出て来たカードは吊るし人のカードだったのである。
それを見てである。彼は思ったのだ。
「苦しめられている存在がありますね」
だからである。まずは江田島を見て回ることにしたのである。江田島は山が多くそこを見回っているだけでかなりの運動になった。
緑の山の中に街や道がありそこに家があるといった島であった。海を見ながら島の中を歩いている。そして人の家が絶えてそこからは山道になろうという場所に来るとである。ふと右手にあるものを見たのであった。それは。
地蔵であった。五体並んでいる。だがその地蔵達はどれも無惨な姿であった。
一つは首が折られ
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