第一章 [ 胎 動 ]
三話 『時間』の少女
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それが致命的なミスになった。いきなり目の前に霊刀の切っ先が現れたのだ。
咄嗟に首を捻ってなんとか躱すがそのせいでバランスを崩してしまい接近していた美香の蹴りが頭を直撃する。
「ガッ!!」
視界が大きく揺らぎ霊刀を手放してしまった。五、六メートルほど吹き飛ばされた所でなんとか体制を直す。
やられた!美香は時間を止めて僕にナイフ代わりに霊刀を投げつけ僕が回避を選ぶと読んだのだ。
とびそうになる意識を気合で繋ぎ止める。まだ終わっていないのだから。
目の前にはもう美香が迫っていた。その手に僕が取り落とした霊刀を持って。
振り下ろされる霊刀を横に転がって躱すけどすぐさま突きで追撃される。もはや逃げ回る以外の選択肢はなかった。
美香の攻撃を躱しながら僕はある物を探していた。さっき美香が僕に投げつけた霊刀だ。素手じゃ間違いなく勝てない。なんとか手に入れないと。
その間も美香の攻撃は続きあちこち霊刀が掠るたびに痛みが奔る。直撃した時の事なんて考えたくもない。
そしてようやく探していた物を視界に捉える。美香の後方十五メートル程の所に落ちていた。後はどうやってあそこまで行くか。
その時美香が霊刀を上段から振り下ろしてきた。振り下ろされる霊刀に向かって僕は霊弾をぶつけた。
霊弾と刃がぶつかり眩い閃光が奔るり、その衝撃で美香はバランスを崩した。霊刀は弾き飛ばせはしなかったが十分だ。
僕は持ち得る全速力で落ちている霊刀の元へと飛ぶ。そして霊刀の柄を握り締めた瞬間、柄ごと手を踏み付けられた。
「いっ!痛ぁぁぁぁッーーーー!」
「惜しかったわね♪何か遺言はあるかしら?」
僕の手を踏み付けながら美香がそう聞いてくる。この状況をひっくり返せるか……無理だ。
諦めた僕の口から出たのは、
「……はじめてだからやさしくしてね?」
それを聞いた美香は咲き誇る花みたいなイイ笑顔で霊刀を振り下ろす。
訓練場に僕の情けない悲鳴が響き渡ったのだった。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
「♪〜♪〜♪〜」
「随分うれしそうだね…」
訓練場の控え室でやたらご機嫌な美香にそう聞いてみる。
「それはそうでしょう、記念すべき三十勝目なんだから♪」
僕と美香の対戦成績は四十三戦中美香が三十勝、僕が十三勝なのだ。
「名門のお方がパンピーに十三敗しているという事実はどうするのでしょう?」
「何とでも言いなさい。勝ちは勝ちよ」
まぁ、今の僕が何を言おうと負け犬の遠吠えにしかならないか。
「さぁて、何を奢って貰おうかしら?」
勝負に負けた方が勝った方に何かを奢るという、いつの間にか出来てい
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