第一章 [ 胎 動 ]
三話 『時間』の少女
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。
僕は右袈裟で斬りかかるが美香にしっかり受けられてしまう。
「甘いわよっ!!」
美香がこっちの攻撃を受けると同時に放った右蹴りが防御の間に合わなかった左わき腹に直撃した。
「ガッ!痛っ〜足癖悪いな!」
そう毒ずきながら距離を取る。そんなにうまくはいかないか。空中で最初と同じような形に戻った。脇腹の痛みを我慢して集中する。
さっきと同じような不意打ちでくるかな?もしくは正面からくるか?どちらにしても美香は接近戦しか戦法が取れないのだ。
不意に美香が動く。
突き!僕の顔面目掛けて迫る霊刀の切っ先を咄嗟に半身になって躱すが、美香はそれを読んでいたかの様にすぐさま刀を横に薙いできた。
それをなんとか霊刀で受け止めそのまま鍔迫り合いになる。
美香が接近戦しか戦法を取れない理由。それは美香が霊弾を作るのが大の苦手だからだ。普段は遠距離攻撃にはナイフを使っている。
前に『実戦でナイフを投げ続けたらすぐに無くなるだろ?』と聞いたことがある。そしたら美香は『時間を止めてる時に回収しているから』と答えたのだ。
真剣勝負の最中にそんな事をしているのか、と思うと逆に笑が込み上げてきたな。
「なにを考えているのかしら?」
突然美香が問いかけてきた。まさか『美香が時間を止めて投げたナイフをせっせと集めているのを想像して笑いを堪えていました』なんて言える訳が無い。
なにか適当に返しておこう。
「美香……今日も綺麗だよ」
「なっ!?」
おお、予想外に効果があった。チャンスだ。
「隙あり!」
力任せに美香の霊刀を上に跳ね上げる。霊刀を両手で握っていた為がら空きになった胴にさっきのお返しとばかりに蹴りを叩き込もうとした瞬間、
「!?」
直感的に前方に身を投げ出すように飛び出す。と同時にさっきまで僕の首があった位置を白刃が奔りぬけていった。
背後からの美香の一撃だった。
「……本当に“勘”だけはいいわね」
何故かやたら殺気を放ちながら僕を睨み付けている。さっきまでは戦意は感じても殺意はなかったのに。
「……なんでそんなに怒ってるの?」
「あら、分からないのかしら?」
ここで『はい分かりません!』って言ったら更に怒りそうだなどうしよう…。
「乙女心を弄ぶなんていい度胸しているじゃない」
「弄んだつもりなんて無いんだけど?」
僕の台詞に美香は呆れたという感じに首を振る。
「もういいわ。勝負を決めましょうか」
美香がそう宣言して僕に斬りかかってくる。それに合わせるように僕も霊刀を振るい迎え撃った。
一合、二合、三合・・・・剣戟が繰り返されるが美香が何を狙っているか解らない為迂闊に踏み込めなかった。
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