第二十章
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第二十章
「あの場所が」
「ですが私は別に構いませんので」
「わかりました。それでは」
「ただ」
「ただ?」
「一つ教えて欲しいことがあります」
また微笑みと共に細木に言ってきたのであった。
「宜しければですが」
「はい」52
「呉にいいスーパー銭湯はあるでしょうか」
「スーパー銭湯ですか」
「はい、あるでしょうか」
それについて尋ねたのである。彼はこれまで東京まで運命の輪のカードを使って戻ってそこのスーパー銭湯を使おうと思っていたがふと考えを変えたのである。
それで細木に対して尋ねたのである。
「それは」
「はい、あります」
微笑んで答えてきた彼であった。
「実はですね」
「実は?」
「潜水艦に乗っているともうあがるとすぐにサウナに行きたがる者も多くて」
「健康の為ですね」
「はい、それでなのです」
スーパー銭湯にはサウナが付き物である。だからそうなるのであった。
「それで潜水艦に乗っている同期からそうした場所も聞いています」
「ではそこは」
「今メモを出させてもらいますので」
細木は早速ペンとメモ用紙を出してきた。そうしてそこにさらさらと書いてそれを速水に差し出したのであった。そこには住所が書かれていた。
「こちらです」
「どうも」
速水はそのメモを受け取って静かに微笑んで応えたのであった。
しかしここで。細木はふとした感じで彼に言ってきたのであった。それは。
「ただ」
「ただ?」
「もう休まれるのですよね」
彼は怪訝な顔で速水に問うてきた。
「それで今スーパー銭湯ですか」
「はい、有り難うございます」
「明日に行かれるのですか?」
細木はこう考えた。これは常識の範囲として普通の考えであった。
「それでなのですか?」
「そうですね。明日もですね」
「明日も?」
「いえ、こちらのことです」
詳しいことは言わなかった。この辺りは彼の術のことなのであえて言わないのであった。言えないといってもそれで通る言葉であった。
「それでは」
「はい、では案内させて頂きますので」
「有り難うございます」
こうして彼は術科学校の一室に案内された。そこは白くあまり広くはないが清潔な部屋であった。既にベッドも用意されていた。
「ベッドメイクもしておきましたので」
「それもですか」
「はい、それではお使い下さい」
ベッドのマットの上に毛布を置いてそれを白いシーツで覆っている。そのシーツの張り方が実にしっかりとしていた。隅まで几帳面に折られよく張っている。それこそ十円玉を落とせばその十円玉が跳ね返る様な。そこまで見事に張られているシーツであった。
そして身体の上にかける毛布もである。実に丁寧に折り畳まれていた。下手なホテルよりも遥かにしっかりとし
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