第十七章
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第十七章
その座布団は濃い赤であった。それが黒いテーブルと妙に合った色彩である。そこに入るとすぐに和服を着た中年の女が出て来て尋ねてきた。
「御注文は」
「まずは牡蠣を」
最初に頼んだのはそれであった。
「そうですね。生牡蠣と酢に漬けたものと」
「他には」
「あとは。フライをお願いします」
この三つを頼んだのであった。
そうしてだった。あとは。
「それと馬刺しを」
「わかりました。それでは飲み物は」
「お酒をお願いします」
こう言っただけであった。
「それはお任せします」
「それで宜しいですね」
「あとは。そうですね」
少し考える顔になって。そのうえで述べるのであった。
「お豆腐を貰えれば」
「お豆腐もですか」
「揚げと。それと冷奴を」
豆腐関係も二種類であった。
「御願いします」
「はい、それでは」
こうして注文しそのうえで酒とその御馳走を楽しむのであった。
牡蠣料理や馬刺しを食べている彼のところに店の者が来て。そっと聞いてきたのであった。
「如何でしょうか」
「お酒と御馳走ですね」
「はい、どうでしょうか」
「文句はありません」
速水は彼女に顔を向けて満足した微笑みと共に述べた。
「どれもです」
「左様ですか。そう言って下さるのですね」
「まずは馬刺しですが」
そこから話すのだった。最初はそれからであった。
「何故江田島で馬刺しが多いのかはわかりませんが」
「はい」
「しかし。江田島の馬刺しはです」
「よいものでしょう」
「ええ、とても」
まさにそうだと言葉を返すのであった。
「いいものです」
「ではお豆腐は」
「これもいいですね」
豆腐は店の者の方から聞いてきたがはっきりと答えることができた。実際に彼はその揚げも食べていれば冷奴も満足した面持ちで食べている。揚げの上にはおろした生姜が丁寧に置かれており冷奴の上にはその生姜と刻んだ葱がある。どちらも実に美味そうであり実際に速水は満足した面持ちで食べているのだった。
「このお豆腐もです」
「有り難うございます」
「淡白でそれでいて味わいがあり。それに」
「それに？」
「幾らでも食べられる感じですね」
そうしたものも持っているのだと述べるのだった。
「いいお豆腐です。京都のそれにも負けてはいません」
「どうもです」
「そしてです」
今度は速水から言ってきた。何といってもであった。
「牡蠣ですが」
「それですね」
「見事です」
まずは一言であった。
「流石は広島ですね。この牡蠣はどれも」
「いいですか」
「生でも酢でもフライにしてもです」
「どれもですね」
「お酒もいいですし」
これについても合格点を出す速水であった。そしてそのうえでさらにその
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