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ドラクエX主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
二部:絶世傾世イケメン美女青年期
七十一話:嫌いじゃない
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 片方の意味でなら、違うけど。
 もう片方なら、そう。
 一緒に旅が出来ない相手を、してくれない相手を、どうやっても私は選べない。

「……僕が。嫌い?」

 そんなわけ無いって、わかってるくせに。
 正直に答えたら期待を持たせるようになってしまうこの聞き方は、ずるい。

「……君が旅を続けることを、パパスさんは望んでない。君のお母さんだって、きっと」

 そんなこと、わかってる。
 だけど私が、そうしたいから。

「……ごめんなさい」

 どうして私は、謝ってるんだろう。
 したいと思うことを、しようとしてるだけなのに。
 それは、やっぱり悪いことなんだろうか。
 私の大事な人たちが、誰もそれを望んでくれないなら。
 応援、してもらえないなら。

 アランさんが、困ったように微笑みます。

「そんな顔をしないでくれよ。苛めて、泣かせたいわけじゃないんだ」

 私は、どんな顔をしてるんだろう。

「わかったよ。僕が悪かった。もう、いいから」
「……ごめんなさい」

 この人は、悪くない。
 心配して、想ってくれただけだ。
 だけど、それなのに。
 すごく、悲しい。

「……諦めるって、決めたところなのに。そんな顔をされると、抱き締めたくなるな」

 どんな顔か、わからないけど。
 こんな時こそ、演技力を発揮して。
 笑えたら、いいのに。

「ドーラちゃん。おにいちゃんで、いいから。最後に、抱き締めても、いいかな?」

 どう答えたらいいんだろう。
 この人のことは、嫌いじゃない。
 状況が違ったら、違う答えを返してたかもしれない。
 でも抱き締めるって、それは

 迷って、答えることも動くこともできずにいるうちに、アランさんの手がゆっくりと、私が避けられる程度にゆっくりと、でも確固とした意志を持って、伸びてきて。

 動けない。
 ……けど。

 …………嫌だ!

 アランさんの手が私に届く寸前に、後ろから手を掴まれて強く引き寄せられます。

「……ヘンリーくん」
「ここまでは、待ったが。これ以上は、黙って見てる気は無い」

 私の手を引いて背後に隠して、ヘンリーが私とアランさんの間に、立ってました。

「……そうだね。それは、僕の役目じゃ無かった。僕は、もう戻るよ。ドーラちゃん、それじゃ。本当にごめんね」

 悲しげに笑って、アランさんが宿に戻っていきます。

 いつの間にか息を詰めていたことに気付いて、大きく吐き出して。
 目の前にある広い背中に、呼びかけます。

「……ヘンリー」
「謝るなよ。お前は、悪くない」

 なんのことを、言ってるんだろう。
 また面倒をかけて、謝ろうとは思ったけど。
 
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