崑崙の章
第22話 「みんなぁ、ただいまっ!」
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では、私はいつも朱里ちゃんにも、桃香様や愛紗さんたちにも助けられていると言えます。
それでも、私がそんな裏方の仕事でもこの仕事を続けるのか。
それは……
『それでも、力ない人たちの代わりならば……汚れ仕事でも後始末でもなんでもやるさ。その先に、きっと笑い合える未来が待っていると思うならば、ね』
その言葉に……私がどれだけ救われたか。
だからこそ、私は盾二様を……ご主人様を尊敬しているのです。
「……貴方は、それでも文官の仕事を続けますか?」
!?
朱里ちゃんが、憲和くんにそう言った。
その言葉は、無機質な……事務的な口調だった。
きっと……ここで否というなら、朱里ちゃんは憲和くんを罷免するだろう。
その覚悟がない人に、これ以上仕事は任せられないのだから。
「………………」
憲和くんは黙って俯き……
振り返って、執務室を出て行きました。
「………………」
「………………」
私と朱里ちゃんは、互いに無言です。
正直言えば……残念です。
彼の飲み込みの早さには、私も朱里ちゃんも期待していましたから……
でも……
「…………ごめんね、雛里ちゃん」
「……ううん。しょうがないよ」
覚悟のない人に、最重要機密であるこの執務室に居させるわけにはいかないから。
「……仕事しようか」
「うん……」
私と雛里ちゃんが、それぞれの竹簡に向き直ろうとした時。
バタン!
扉を乱暴に開け放たれました。
「………………」
「………………」
息も荒々しくそこに居た人。
それはつい先程、この執務室を出て行った簡雍憲和――その人。
「宰相様!」
彼の手には一本の剣。
鞘に収められたその剣を手に、私達の前に来ます。
(まさか――!?)
私は思わず身を強張らせます。
彼が、その剣を――
床において、平伏しました。
「「へ!?」」
突然の行動に、図らずも朱里ちゃんと声がかぶりました。
い、一体、どういう……
「これまでのご無礼、お許し下さい! 僕は……僕は覚悟が足りませんでした!」
彼は平伏したまま、そう声を上げます。
「ですから……今後もし、僕にその覚悟がないと思われたら! どうかその剣で、僕を貫いてください!」
………………
私は、朱里ちゃんを唖然として見ます。
朱里ちゃんも、私を唖然として見ています。
そして……
「「ぷっ……」」
私と朱里ちゃんは、互いに笑いました。
私達の目が……正しかったことに安堵して。
―― 盾二 side ――
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